横浜の保育園で“汚染”土騒動 園児2人が白血病発症 市は動かず
市職員による保育園での線量測定(提供・太田正孝… (10:14)週刊朝日
【保育園で線量測定をしている市職員】
2011年3月11日の東日本大震災による東京電力福島第一原発事故で、各地へ拡散した放射性物質。市によると、保育園などでは汚染の可能性のある土や砂塵(さじん)を一時的に取り除き、ポリ袋に入れて密閉した後、園内などで保存していた。その後、市は一部を保管庫である北部汚泥資源化センター(鶴見区)に移したが、残りは園内に埋まったままだ。
「残りの汚染土も掘り起こして、保管庫に移してほしい」
こう訴えてきたのは、市民団体「神奈川・子どもを守りたい」の中井美和子共同代表。団体は同様の趣旨の署名約5400筆を、5月27日、林文子市長宛てに提出した。
なぜ一部は保管庫に移され、一部は園に埋められたのか。市こども青少年局保育教育運営課の小田繁治さんはこう説明する。
「横浜市が定めた対応すべき放射線量の基準の目安は、地上1センチの高さで、毎時0・59マイクロシーベルトです。16年6月の時点で測定した結果、14施設で線量が高いことがわかった。その後、再測定をして、そのときも対応の目安を超えていた9施設について、センターに移した」
残りの“土”については、「対応の目安となる基準より低いため、(対応する)必要はないと考えている」という。
港南区にある保育園では、敷地の裏手にフェンスが建っている。その内側、地表から10~15センチのところに、ビニール袋などで封をした“土”が埋められている。今年4月、市職員が市民らとともにその周辺の空間線量を測定したところ、毎時0・05マイクロシーベルトの放射線が確認された。
「柵をしなければならないものを、園内に埋めるという市の感覚を疑う」と太田正孝市議。5月27日に開かれた市のこども青少年・教育委員会で土を撤去するよう請願した。市は151の保育園に“土”が埋まっているとした上で、「(移す)必要性はない」(市こども青少年局の齋藤聖局長)と説明した。
こうした市の対応に怒りをあらわにするのは、子どもを園に預けている保護者たちだ。「そもそも、園内に“土”が埋まっていることは、園から聞いていない」と園児の母親(30)。小田さんは、「埋めたときに線量を測定した際に、各園でお知らせするようにはしていたが、その後、多くの園では話をしていないと思う」と話す。
因果関係は明らかではないものの、「汚染土があれば当然、何らかの病気にかかるリスクはある」と中井共同代表は考える。園児の父親(33)も、「“土”が原因ではないかもしれない。ただ、今、園に通う子供たちの安全を考えたら、埋まっているものは全部撤去し、新しい土に入れ替えてほしい」。
齋藤局長は27日の委員会で、「保護者の方々が不安になるようなことがあれば、きめ細かく寄り添えるような対応ができるか、今後、検討していきたい」と述べた。また、横浜市の説明はホームページ(https://www.city.yokohama.lg.jp/kurashi/kosodate-kyoiku/hoiku-yoji/shisetsu/info/hoshasen/taio/20190529.html)に掲載されている。(本誌・山内リカ)