政府基幹統計、4割の22統計に間違い 抽出方法など
2019年1月24日
「毎月勤労統計」をめぐる厚生労働省の不正調査問題をうけ、政府が56ある基幹統計が適正に調査されているか点検した結果、4割にあたる22統計に計31件の間違いなど何らかの問題があったことが24日、わかった。このうち統計法違反に該当する可能性がある間違いも21統計あった。
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点検結果をまとめた総務省が同日発表した。24日夜に記者会見した三宅俊光・総務省政策統括官は、「(過少給付につながった)毎月勤労統計のような重大な事案はなかった」としているが、政府の統計の取り扱いのずさんさが改めて浮き彫りになった形だ。統計を所管する同省は今後、調査結果を同省の統計委員会に諮り、233ある一般統計も含めて点検し、再発防止策を探る「専門部会」も新たに作る方針。
データの数値に誤りがあったのは国土交通省の「建設工事統計」。1事業者が施工高などを「百万円単位」で書くべきところ、「万円単位」で記入したため、公表した全体の値が実態よりも大きかった。ほかにも7事業者で誤記載があった。国交省は同日、17年度の施工高を15・2兆円から13・6兆円に訂正。前年度比伸び率も14・9%から2・5%に下方修正した。
このほか、総務省の「住宅・土地統計」や財務省の「法人企業統計」、文部科学省の「学校教員統計」など9統計で、計画通り集計されていなかったり、公表されていなかったりする事項があった。問題の発端となった厚労省の毎月勤労統計でも、従業員30人以上の事業所について産業別の賃金水準の分布を示す資料で、本来は賃金水準ごとの事業所数を記すべきなのに、割合を記載する誤りがあったという。
また、国土交通省の「建築着工統計」では、一部の都道府県の抽出方法が国が示している手順と細部で違っていた。経済産業省の「商業動態統計」など16統計では、調査方法の変更を総務相に申請しなかったり、計画通り公表されなかったりするなど、「手続き上に問題がある」とした。
統計法違反に該当する可能性のある21統計は、総務相の承認を定めた同法9条に抵触する可能性があるという。調査手法や項目などで総務相の承認内容と異なっていたとみられる。
今回の基幹統計の点検は、厚労省が所管する毎月勤労統計で不正調査が発覚したことを受け、菅義偉官房長官が今月11日、各府省庁に指示していた。(別宮潤一)
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問題が見つかった基幹統計(※は重複)
誤った数値を公表→訂正
建設工事統計(国土交通省)
集計・公表漏れ
住宅・土地統計(総務省)
経済構造統計(同)
全国消費実態統計(同)
法人企業統計(財務省)
学校教員統計(文部科学省)
毎月勤労統計(厚生労働省)
建築着工統計(国交省)
鉄道車両等生産動態統計(同)
経済産業省企業活動基本統計(経済産業省)
都道府県の作業手順に誤り
※建築着工統計(国交省)
その他手続きに問題
商業動態統計(経産省)
※経済産業省企業活動基本統計(同)
ガス事業生産動態統計(同)
※建築着工統計(国交省)2件
自動車輸送統計(同)2件
港湾統計(同)2件
造船造機統計(同)2件
※鉄道車両等生産動態統計(同)
法人土地・建物基本統計(同)
※学校教員統計(文科省)
社会教育統計(同)
薬事工業生産動態統計(厚労省)
医療施設統計(同)
患者統計(同)
牛乳乳製品統計(農林水産省)
農業経営統計(同)
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〈基幹統計〉 国の公的統計のうち、特に公共性が高く重要な56の統計で政府が政策立案する際の根拠となる。毎月勤労統計のほか、国勢調査の統計や国民経済計算などがあり、調査手法や対象、項目などを変更するには総務相の承認を得る必要がある。作成に関わる人が「真実に反するものたらしめる行為」をした場合の罰則は、「6カ月以下の懲役または50万円以下の罰金」。