〈解説〉

東京電力は、トリチウムだけが取り除けてないとしていた、放射能汚染水に、トリチウムだけではなく、ヨウ素129(半減期5700万年)、ルテニウム106(半減期370日)、アンチモン125(半減期3年)が取りきれていないので、再度、放射能汚染水を浄化する方針を明らかにしました。2018年10月1日。

〈参考〉東京電力  多核種除去設備等処理水の性状について 2018年10月1日

  また、この資料の中で、2015年5月までのALPS(多核種除去設備)でストロンチウム90(半減期29年)を除去していなかったことも明らかにしました。つまり、2018年8月30日、8月31日に経済産業省主催で、「トリチウム汚染水の海洋放出の是非」を問う公聴会が、福島県富岡町、郡山市、東京都内で開かれましたが、そもそもトリチウム汚染水と呼んでいたものが、高濃度のストロンチウム90、ヨウ素129、ルテニウム106、アンチモン125を含んだ放射能汚染水であることが明らかになりました。8月30日、8月31日に何百万円の国民の税金、参加した市民の時間と労力は一体何だったのでしょうか?

 2018年10月5日、この東京電力の放射能汚染水を再度浄化する、という方針に対し、「法令濃度限度以下であれば、水で薄めて海に放出して構わない」という、非科学的な見解を示しました。これは、法令に定められた告示濃度限度そのものが、環境への影響を無視した、デタラメであり、この濃度限度を更に原発事故の放射能汚染水に適用しようとする見解です。何と、原発が出す放射能の規制については、放射能の総量についてはなく、濃度限度を決めてあるだけなのです。つまり、京ベクレル(10000000000000000ベクレル、0が16個)のストロンチウム90でも、たくさんの水で薄めれば、海に流していい、というのが、現行の法令なのです。原発が通常運転していても、環境中にヨウ素131やプルトニウム239、ストロンチウム90などを出していました。というのは、総量規制がなく、濃度だけを規制しているからです。原発の運転年数が増えれば増えるほど、環境へ放射能は放出されていきます。まさに青天井状態です。

 さらに、更田原子力規制委員長(原子力を規制するのが仕事、のはず)は、この原発が通常運転で出す放射能汚染水の濃度限度を、東京電力福島第一原発事故の放射能汚染水に、そのまま、適用しようとしています。これを非科学的と言わずして、何を非科学的と言うのでしょうか?

 この発言により、更田氏を即刻解任すべきだ、と考えます。東京電力福島第一原発事故の放射能汚染水の処理は、大前提として、総量規制するべきです。

 ちなみに、原発は通常運転でも、以下に記載したの緩い濃度限度で運転されています。九州電力-玄海原発3号機、4号機、川内原発1号機、2号機、関西電力-大飯原発3号機、4号機、高浜原発4号機(高浜原発3号機は2018年8月3日から再稼働工程中。現在5号検査中)、以上7基の原発が稼動中です。これらが海水に放出してもいい、放射能汚染の限度は以下の通りです。この基準を更田原子力規制委員長は、東京電力福島第一原発事故の放射能汚染水に適用しようと発言したのです。

ストロンチウム90   30ベクレル/L

ヨウ素129           9ベクレル/L

ルテニウム106      100ベクレル/L

アンチモン125      600ベクレル/L

トリチウム       60000ベクレル/L

この法令濃度限度が、「科学的」であるとは言えません。この法令に定められた、告示濃度限度は、国際放射線防護委員会(ICRP)の放射線防護モデルに基づいていますが、この国際放射線防護委員会(ICRP)の放射線防護モデルは、原発の運転がしやすいように、ある限度は撤廃され、ストロンチウム90などの線量評価は緩められてきた歴史的経過があります。この法令は厳しくすべきです。また、この緩すぎる限度で、原発事故放射能汚染水を海に放出してよいわけがありません。放射能汚染水の放射能は、総量で規制すべきです。

※ 上記東京電力資料の「告示濃度限度(Bq/L)」に注目

 ◾処理水の再浄化「必要なし」 規制委員長、科学的安全性踏まえ

福島民友  2018年10月06日 1面

東京電力福島第1原発を視察後、報道陣の質問に答える更田委員長

 東京電力福島第1原発の汚染水を浄化した後の処理水に、排水の法令基準値を上回る放射性物質トリチウム以外の放射性物資が残留していることに関し、原子力規制委員会の更田(ふけた)豊志委員長は5日、東電が処分前に実施する方針を示した処理水の再浄化は必ずしも必要ではないとの認識を示した。更田氏は科学的な安全性を踏まえ「告示濃度制限(排水の法令基準値)が守られる限り、絶対に必要なものという認識はない」と述べた。

 同日、福島第1原発を視察後、報道陣に語った。1日に開かれた処理水の処分方法を検討する政府の小委員会では、処分する場合は再浄化を議論の前提にすると確認したばかり。

 更田氏は「科学的には、再浄化と(より多くの水と混ぜることで)希釈率を上げるのに大きな違いはない。告示濃度制限は非常に厳しい低い値に抑えられている」と指摘。

 処分方法の一つとして検討されている海洋放出の場合、希釈して基準値を下回れば容認する立場を改めて示した。

 ただ更田氏は「事故を経験した現場から出てくる水であり、再浄化という議論は理解できる」とも語った。

 また、更田氏は廃炉作業への影響から処理水の処分の必要性を強調。処分方法については「希釈して海洋放出するのが最も合理的だが、社会的な影響は小さくなく、あらゆる関係者の判断に委ねるしかない」と語った。

 東電は、福島第1原発のタンクに保管中の水の約8割でトリチウム以外の放射性物質濃度が基準値を上回っていると推定。8月末の公聴会では詳細な情報が示されず批判が相次ぎ、東電は風評被害などの影響を考慮し、処分する場合は再浄化が必要と判断した。