(1) 2018年6月18日、第31回福島県県民健康調査検討委員会が開かれました。先行検査(2011,2012,2013年度)で115名(良性結節1名を除く)、2巡目検査(2014,2015年度)71名、3巡目検査(2016,2017年度)12名、総計198名の小児甲状腺がんの子どもたちが見つかっていることが報告されました。
(2) 同時に同会席上で、福島県が行っている、県民健康調査検討委員会甲状腺検査サポート事業について報告がありました。福島県は、甲状腺がん及びがん疑いで治療を受けている方々(県民健康調査による甲状腺検査を受けていることが条件。2次検査で悪性ないし悪性疑いとされたまたは経過観察とされた方。悪性ないし悪性疑いとなった方。)への支援金を交付する制度を2015年度から開始。2015年度121件、2016年度104件、2017年度88件、合計313件の支援金を実数233人に交付しました、と公表しました。すなわち、第31回県民健康調査検討委員会が公表した、198人を大きく超え、少なくとも233人の小児甲状腺がんの患者がいることになります。また、この実数233人は、県民健康調査の検査で経過観察とされた後、甲状腺がんと診断され手術を受けた方も含まれており、同会席上では手術を受けた82人のうち5人は県民健康調査の検査以外で甲状腺がんと診断されている例があることが報告されました。
民間の「3.11甲状腺がん子ども基金」は、福島県のみならず、ヨウ素131の強いプルームが通った地域の1都13県(岩手、宮城、福島、群馬、千葉、埼玉、神奈川、東京、長野、山梨、静岡、新潟、茨城、秋田)で、原発事故当時0~18歳で甲状腺がんにかかった方に手のひらサポート(10万円を給付、RI治療や再発・再手術の方には追加それぞれ10万円を給付)を行っています。2018年5月16日現在で120名の方に給付を行っています。同基金のアンケートの中で、福島で小児甲状腺がんにかかった方84名のうち8名が再発・転移のために再手術を受けたことがわかっています(2018年2月28日公表)。つまり約10%の方々。福島県の甲状腺サポート事業が、実人数が233人なのに、313件の交付とは実に60人の方が再発・転移されている可能性があります。その割合は実に23%にものぼります。
チェルノブイリでもっとも放射能の降下が多かったとされるベラルーシでは、原発事故当初、小児甲状腺がんの治療を大人と同じように甲状腺の部分切除(甲状腺右葉ならば甲状腺右葉と甲状腺峡部)をしていました。しかし、原発事故後の小児甲状腺がんは悪性であり、転移しやすく、肺転移した子どもが亡くなることもあったため、以降は「原発事故後の小児甲状腺がんは放射性物質誘発がんであり、悪性。したがって甲状腺全摘出する。」と国の法律で定めています。
ところが、福島県はこうしたチェルノブイリの経験にも学ばず、小児甲状腺がんの手術を一部、部分摘出で行っています。フライデー2015年9月25日号には、「(高校2年の2012年夏に)甲状腺がんと診断を受け、(高校3年の2013年夏に)甲状腺の右半分と転移していた周囲のリンパ組織を切除しました」「(芸術系大学入学1年目の2014年)健康診断で『血液がおかしい』との結果が出た」「(2014年の)夏休みに帰郷し、県立医大で検査を受けると『ガンが再発している』と言われたんです。治療に専念するため、通ったばかりの大学も退学せざるとえませんでした。(2014年の)10月の再手術では、残っていた左半分の甲状腺とリンパ組織を切除。甲状腺が全摘出することになったんです。肺への転移も判明し、術後しばらくはかすれた声しか出ず、キズの痛みをこらえながらリハビリを続けていました」「(2015年)4月には肺がん治療のため『アイソトープ治療』も受けた。放射性ヨウ素の入ったカプセルを飲み、転移したガン細胞を破壊するという療法だ」という女性の手記とルポを掲載しています。
福島県が今回、発表した甲状腺検査サポート事業の313件、実人数233人がもしこうした背景を持った数字であるならば、県民健康調査検討委員会でしっかり議論され、新聞各紙は事実の究明の記事を書くべきです。2018年6月18日の県民健康調査検討委員会はまたしても「小児甲状腺がんは原発事故との因果関係とは考えにくい」との不毛な議論に終始し、甲状腺サポート事業の313件、実人数233人について、まったく検討も加えていません。
our planet tv さんが詳細なレポートをして下さっています。感謝します。第31回「県民健康調査」検討委員会の録画の1時間42分49秒からが、福島県の甲状腺サポート事業の報告と委員による協議です。お粗末な議論でした。
甲状腺がん悪性または疑い200人超え〜福島県が公表
投稿者: ourplanet 投稿日時: 金, 06/15/2018 – 03:30
録画:1時間42分49秒~ 福島県の甲状腺サポート事業の報告と県民健康調査検討委員による協議
(3)この福島の小児甲状腺がん198人と福島県の甲状腺検査サポート事業について報道したのは、福島民友2018年6月19日だけでした。福島の小児甲状腺がん198人について報道したのは、福島民友のほか、福島民報、朝日新聞でした。毎日新聞は「甲状腺がん確定」のみを報道したので162人と報道しています。犯罪的なのは読売新聞です。福島の小児甲状腺がんが198人と発表されたことには一切触れず、被曝「子孫に影響」3割があると福島県民は思っている、正しい情報の周知が必要だ、という記事のみを載せています。それも全国版には記事を一切載せず、福島版のみに記事を掲載しています。東京新聞は大阪北部地震の報道のためか、記事がありません。東京新聞には福島県の小児甲状腺がんの記事については、落とすことなく必ず掲載してほしいと思います。
問題なのは、福島民友の記事でも「甲状腺の治療費 延べ233人に交付」とあります。これは間違いです。延べは313人であり、233人は実人数、と福島県も発表しています。訂正するべきです。
この233人は甲状腺がん及びがん疑いとして申請書を出し、受理されて交付された人数であり、198人を大きく超える、少なくとも233人は福島の小児甲状腺がんの子どもたち、青年たちがいる、ということです。小児甲状腺がんの実数は233人よりももっと多い、ということです。また、再発・転移のため再手術を受けた方々がそのうち60人(場合によっては1人で2回を超える手術も)いるかもしれない、ということです。
福島民友のように、新聞各紙はきちんとこの問題を追及し、報道するべきだと思います。
(4) 新聞各紙はどのように報道したか?
甲状腺がん9人に 県民健康調査3巡目 新たに2人確定 福島民友 2018年6月19日4面
3巡目、がん確定9人に 子どもの甲状腺検査 県民健康調査検討委 福島民報 2018年6月19日2面
福島 甲状腺がん新たに3人 朝日新聞 2018年6月19日 35面
福島・甲状腺がん新たに2人 毎日新聞 2018年6月19日22面
被曝「子孫に影響」3割強 県民調査 正しい知識の周知必要 読売新聞 福島版 2018年6月19日23面新
東京新聞は報道しませんでした。
民間団体「甲状腺がん子ども基金」が10万円の手のひらサポートを96人に給付。1都13県 2017年8月2日現在