朝日新聞は脱原発だと思って読まれている方がいたら、その方は大きな誤解をされています。以下の朝日新聞2018年5月13日2面の記事と、フクナワ2018年5月24日の記事とを読み比べて欲しいです。朝日新聞の記事には、これほど長い記事であるにも関わらず、次々と起きている原発トラブルについて一切触れられていないのです。

 これはもはや意図的な世論誘導です。原発再稼働を数だけの問題に注目させ、原発トラブルから目を反らせる、悪質な記事であると言わざるを得ません。

 [朝日新聞]

原発再稼働「西高東低」 東日本、福島と同型が大半 西日本、再稼働8基が集中

朝日新聞 2018年5月13日 2面

 原発の再稼働が西日本で進み、今後の焦点は東日本の原発に移る。政府は今後、30基程度の再稼働をめざしているが、東日本の炉の大半は事故を起こした東京電力福島第一原発と同じ型式だ。地元の反対も根強く、先行きは見通せない。▼1面参照

 ■新たな安全対策、難航

 11日午後5時、大阪市内の関西電力中央給電指令所。大飯原発4号機(福井県、118万キロワット)の出力表示がぐんぐん上がった。9日に再稼働した4号機が、予定通りに発送電を始めた。6月上旬には営業運転に入る。再稼働した関電の原発は4基目。関電幹部は「これを機会に反転攻勢に出たい」と意気込む。

 福島の事故を受けて厳しくした新規制基準が施行されてから約5年。これまでに再稼働した原発は、西日本に集中する。いずれも事故を起こした福島第一の沸騰水型(BWR)とは異なる加圧水型(PWR)だ。6月には九州電力玄海4号機(佐賀県)も加わる見通しで、5原発9基が再稼働に至る。

 廃炉を除いた国内の原発は、建設中も含めて18原発42基。うち16原発26基が、原子力規制委員会に再稼働に向けた審査を申請した。

 再稼働にこぎ着けた9基を含むPWRの6原発12基は新基準が施行された2013年7月に審査を申請。地盤の審査が難航する北海道電力泊1~3号機を除く「第1陣」の9基が順当に動き出すことになった。

 一方、BWRは当初の申請から遅れた。福島の事故の教訓から、原子炉格納容器の内部の圧力が高まって壊れないよう、放射性物質を減らしながら蒸気を放出する安全装置「フィルター付きベント」などの設置が新たに義務づけられた。地元自治体の了解を得るのに時間がかかり、審査も特に慎重に進められた。

 ようやく昨年12月、東電柏崎刈羽6、7号機(新潟県)がBWRで初めて新基準に適合するとして許可を得た。PWRの一番手だった川内原発から遅れること3年余りと難航した。

 日本の原発は、歴史的にPWRを三菱重工業、BWRを東芝と日立製作所が主に作ってきた。

 導入する電力会社によって、結果的に西日本と東日本に分かれた。BWR陣営の「盟主」である東電は、審査でも中心となってきた。規制委は各社のBWRの審査を進めるなかで、設備については柏崎刈羽6、7号機を集中的に進めて「ひな型」とし、効率化を図った。設計が比較的新しい「改良型」で、問題になりそうな審査項目が少なくて済むと判断したからだ。

 ほかのBWRは、柏崎刈羽の審査の動向を待つかたちになった。今後の規制委の審査はBWRが中心になるが、長引く可能性がある。(西尾邦明、川田俊男)

 ■審査先行する柏崎刈羽 知事交代、先行き不透明

 BWRのトップバッターと目される柏崎刈羽。再稼働時期は見通せない。耐震工事を控え「工事計画」など二つの認可も必要だ。さらに再稼働に慎重だった新潟県の米山隆一前知事が女性問題を巡って4月に辞職。原発事故の検証総括委員会が2月にスタートした矢先で、県が独自に進める検証の行方は不透明になった。

 米山氏は避難計画の実効性など、検証を終えるまで再稼働の判断をしない考えだった。一方、立地自治体の品田宏夫・刈羽村長は「国の審査を通れば再稼働は当然」。桜井雅浩・柏崎市長は条件付き容認の立場だ。新しい知事の考え方次第で、再稼働の方向性が変わる可能性がある。

 地元の脱原発団体からは「自公系の知事が誕生すると、脱原発派の委員が交代させられるのでは」と、再稼働の動きが加速することへの懸念の声も上がる。

 BWR陣営で続く日本原子力発電の東海第二(茨城県)は、運転開始から40年となる今年11月までに運転延長などの許認可を得られないと廃炉を迫られる。規制委は最優先で審査を進めているが、必要な試験結果などの提出が遅いとして打ち切りも示唆している。

 また、3月に新たに設けられた「地元同意」の仕組みも再稼働の行方を左右しそうだ。再稼働の際には東海第二が立地する東海村に加え、周辺5市の事前了解を得るとする安全協定で、こうした協定が明文化されるのは全国初だった。ただ、6市村の意見集約方法など、どのような運用になるかはっきりしていない。加えて、政府が12年に定めた原子力災害対策指針は、原発から30キロ圏内の自治体に避難計画の策定を義務づけたが、東海第二の場合、該当する14市町村で策定したのは3市にとどまっている。

 審査が終盤にある東北電力女川2号機(宮城県)も工事完了は20年4月以降となっている。(高木真也、比留間陽介)

 ■国の計画案、30年度に30基 採算性・民意とズレも

 経済産業省幹部は「原発の信頼回復には、再稼働を着実に進めて電気料金を安くし、利点を感じてもらうことが重要だ」と語る。

 今夏に改定するエネルギー基本計画の原案には、2030年度までに原発の比率を20~22%にするとの電源構成を明記。30基程度の再稼働をめざす。

 だが、原発事故後、大手電力会社は徐々に原発の採算性にシビアになっている。再稼働や最大60年まで運転延長をするには巨額の安全対策費がかかるためだ。採算性を理由に再稼働をあきらめ、廃炉を選択する動きも相次ぐ。

 四国電力は3月、伊方2号機(愛媛県)の廃炉を決めた。電力需要が伸び悩み、運転延長してまで動かすメリットが薄れたからだ。

 再稼働するには二つの対策工事などで2千億円近い費用が必要。工事に4、5年かかるうえ、法律が定める原則40年の運転期間まで4年しかない。佐伯勇人社長は「(再稼働は)かなりのリスクを抱えざるを得ず、苦渋の決断」と話す。

 関電も昨年、大飯1、2号機の廃炉を決定。15年には九州電力玄海1号機(佐賀県)、中国電力島根1号機(松江市)の廃炉が決まった。

 東電にしても、柏崎刈羽1~4号機については「再稼働は難しい」との見方が社内にある。想定する基準地震動が大きく、巨額の安全対策費がかかるのが確実だからだ。ある大手電力幹部は「それなりに国の支援がないと、もはや民間だけでは原発のリスクを負いきれない」と話す。

 各種世論調査では、再稼働に反対する意見は賛成の倍近く。「いまのペースでは(原発比率)20%はなかなか見えてこない」。経産省幹部は漏らす。基本計画は「絵に描いた餅」に終わる可能性がある。(西山明宏、伊沢友之)

 ■<視点>リスク拡大、政府は現実直視を

 東京電力福島第一原発事故が起こったとき、日本には54基の原発があった。このうち9基が再稼働にこぎつける一方で、すでに15基の廃炉が決まった。

 政府は今夏に閣議決定するエネルギー基本計画で、2030年度に30基前後の運転を目指す。しかし、再稼働に向けた国の主要な審査を終えた原発は、ほかに5基。審査中の原発は12基。実現は困難だ。

 最大の要因は、福島の事故で原発の安全規制が抜本強化されたことだ。世界で常識だった過酷事故対策が日本でも義務づけられた。津波や地震対策も強化され、多額の安全対策費が必要になった。これは世界共通の流れだ。

 巨費を投じて再稼働を目指しても、司法や住民の厳しい目にさらされる。再稼働にこぎつけた9基のうちの5基は、運転差し止めの判決や仮処分命令を受けた。伊方3号機はその命令によって現在、停止中だ。

 再稼働の判断に関与を強めようとする自治体の動きも、各地で噴出している。人類史に残る福島の惨禍を目の当たりにした国民としては、当然だ。

 日本の原発は様々なリスクを抱え、徐々に居場所が狭まっている。政府はその現実を踏まえ、原発利用のあり方を根本から見直すべきだ。(編集委員・上田俊英)

 

 

 

 

 

 

 

[フクナワ]

7原発12基ダクトに腐食や穴 柏崎3号は換気異常

フクナワ 2018年5月24日(木) 13:00

 
ダクトに腐食や穴が見つかった全国の原発
ダクトに腐食や穴が見つかった全国の原発

 原子力規制委員会は5月23日、全国の原発などで中央制御室の空調換気系ダクトに腐食による穴がないか調査した結果、一部に腐食や穴が見つかったのは7原発12基だったと明らかにした。全てが事故を起こした東京電力福島第1原発と同じ沸騰水型原発。このうち東電柏崎刈羽3号機(新潟県)は腐食の程度や穴が大きく、中央制御室の換気機能に異常がある可能性がある。再稼働審査に合格した同7号機でも異常がないか確認する。他の10基には異常はないという。

 規制委の更田豊志委員長は定例記者会見で、柏崎刈羽3号機について東電に速やかな是正を求めた。

 中国電力島根原発2号機(松江市)の中央制御室のダクトで2016年12月に腐食による複数の穴が見つかった問題を受け、規制委が昨年1月、各電力事業者に調査を指示していた。穴が開いていると、原発事故時は放射性物質が中央制御室に流入し、運転員が被ばくする恐れがある。

 規制委によると、腐食などが確認されたのは東北電力女川3号機(宮城県)、日本原子力発電東海第2(茨城県)、東電の福島第1の6号機と柏崎刈羽3、4、6、7号機、中部電力浜岡3〜5号機(静岡県)、北陸電力志賀1号機(石川県)、島根1号機(松江市)。一部は事業者が既に明らかにしている。

 柏崎刈羽の3、7号機で見つかった穴や亀裂は計9カ所。3号機の縦約13センチ、横約5センチの亀裂が最大だった。

 沸騰水型の場合、ダクトの外気取り込み口に水分や塩分を除去するフィルターを設置しないメーカーが多かった。

[朝日新聞は玄海原発4号機の再稼動延期を朝日新聞 西部本社版でしか報道しなかった。2018年5月16日朝刊 西部本社版28ページ]

 2018年5月24日、朝日新聞のお問い合わせ窓口に問い合わせたところ、この、西部本社版が対象としている地域は、山口県、福岡県、佐賀県、熊本県、鹿児島県、長崎県、大分県、宮崎県、沖縄県。以上、つまり埼玉県で朝日新聞を購読している人は以下の記事を読むことはなかったのです。東京、埼玉などに住まわれている方はぜひ、朝日新聞2018年5月16日の朝刊をすみずみまで確認してほしい。玄海原発4号機が一次冷却水ポンプの水漏れで再稼動工程の開始が遅れたという記事が見当たらないはずです。こうして、玄海原発、川内原発は、九州地方の人だけの問題となり、首都圏の反原発運動と分断され、その力を弱める効果を新聞が発揮しています。