衆院選2017が、2017年10月22日投開票と迫っています。2017年10月7日、立憲民主党が政策を発表し、各党の政策は出揃いました。 

  自民党以外は、公明党、自由党、希望の党、立憲民主党、社民党、日本共産党は、みな「原発ゼロ」かの報道がされています。(日本維新の会はかつて原発ゼロを掲げていましたが、今は原発容認です。)

  果たして、そうでしょうか?

  結論から言えば、社会民主党、日本共産党以外は、すべて原発容認派と言えます。

   社会民主党は、衆院選2017年政策の中で「高速増殖炉『もんじゅ』の廃炉だけでなく、六ヶ所再処理工場など核燃料サイクル計画から全面撤退します。日米原子力協定の延長に反対します。」と正しく書いています。

   日本共産党も、衆院選2017政策は原発に「核燃料サイクル(プルトニウム循環方式)からただちに撤退します。再処理工場などの関連施設を廃止します。」と書いています。

  立憲民主党は、衆院選2017年政策の中で「1日も早く原発ゼロへ。原発ゼロを単なるスローガンとして語る次元はとうに過ぎています。原発ゼロは、未来の世代に対する私たちの世代の責任です。再稼働は現状では認められません。原発の稼動がなくとも、日本の経済は成り立ちます。再生可能エネルギーや省エネ等の技術開発によって、もはや原発ゼロはリアリズムです。」と唄い、

1 原発を1日でも早くなくすための「原発ゼロ基本法」制定

2 成長戦略としての、再生可能エネルギー・省エネ技術への投資拡大と分散型エネルギー社会の実現

 3  パリ協定にもとづく地球温暖化対策の推進

 と政策を3つ、掲げています。

  しかし、この立憲民主党の「原発ゼロ基本法」の中に、使用済み核燃料からのプルトニウム抽出の権利の放棄、日米原子力協定の破棄が、入らなければ、原発ゼロはできません。立憲民主党の原発ゼロ政策は、絵に描いたもちになりかねません。

 

  かつて、2011年8月、当時の民主党野田政権が、原発ゼロを掲げました。しかし、2週間もしないうちに、その原発ゼロを撤回するはめになりました。それは、アメリカから、「原発をゼロにしたら、使用済み核燃料から取り出したプルトニウムはどうするのだ?」「このままだと日本は核武装するためにプルトニウムを保有しているようにしか見えない」「それはアメリカも認めない」「プルトニウムをアメリカにすべて渡して、プルトニウム抽出の権利を放棄するのか?」

と、アメリカから問われ、「いえ、日本は使用済み核燃料からのプルトニウム抽出の権利を放棄しません。」「保有しているプルトニウムはMOX燃料としてすべて原発で使います」と、あっと言う間に、原発ゼロは放棄されたのでした。

  原発ゼロは、使用済み核燃料からのプルトニウム抽出の権利放棄とセットでしかありえません。

  また、世界広しと言えども、使用済み核燃料からのプルトニウム抽出をアメリカやIAEAが認めているのは、アメリカ、ロシア、中国、イギリス、フランスの核兵器保有国5ヵ国と、非核兵器保有国ではただ一つ、日本だけです。

  韓国は、韓米原子力協定の更新の際、「韓国にも、使用済み核燃料からのプルトニウム抽出の権利を」と、アメリカに要求しましたが、アメリカから拒否されています。

  日本が、非核兵器保有国でありながら、唯一、使用済み核燃料からのプルトニウム抽出を認められているのはなぜでしょうか。それは、戦争被爆国でありながら、アメリカの核戦略を支持し、支えているからです。2017年7月7日、国連で122ヵ国が賛成して、採択された、核兵器禁止条約にも、日本は核兵器保有国5大国とともに反対しています、

  日本の保守層には、日本の独自核武装論が根強くあり、希望の党代表の小池百合子氏も、その一人です。

  希望の党は、間違っても、「脱原発」ではありません。使用済み核燃料からのプルトニウム抽出と独自核武装の野望を担っている勢力になりかねません。。

  日本の原発ゼロは、①日本に使用済み核燃料からのプルトニウム抽出の権利を認めた、日米原子力協定の破棄、②プルトニウムのアメリカ、イギリスなどへの引き渡し、抜きには、ありえないのです。

  この意味で、もっとも、現実的な政策を掲げているのは、社会民主党であり、次に、日本共産党です。立憲民主党は脱原発、原発ゼロの政策ではありません。

  自民党は、原発の新設も唱っています。論外です。公明党、希望の党は、「原子力規制委員会が安全と認めた原発の再稼働は容認する」という立ち場です。これがなぜ2030年までに原発ゼロになるか、というと、原発の運転年限40年を守り、原発の新設をしないと、次々に原発の運転年限が来て、原発ゼロになる、ということです。

  しかし。その時でも、取り出したプルトニウムはどうするのだ?という、アメリカからの質問に答えなくてはなりません。日本の保有するプルトニウムは46.9トン、長崎型原爆に換算すると核弾頭6000発分に相当する、と言われます。あと、12年でMOX燃料としてすべて消費することは不可能です。

  2030年に原発ゼロを唄う政党も、やるやる詐欺と言えます。言っていることは現実的であるかの装いですが、現実的な日米原子力協定の問題に触れていないため、いざ、アメリカとぶつかれば簡単に原発ゼロを撤回するでしょう。

  日本が今後も使用済み核燃料からのプルトニウム抽出する権利を保有するのか、それとも放棄するのか。日米原子力協定の自動延長をするのか、原発をやめ、破棄するのか。それが原発依存・破滅と、脱原発・日本再生かの、別れ道です。

  日米原子力協定の更新は、2018年7月です。今から、アメリカとの交渉を始めなくてはなりません。日米原子力協定の自動延長、それは日本の原発が今後も稼動し続ける、ということを意味します。東海、南海、東南海地震が今後30年以内に必ず起きる、と言われています。それは第二の原発事故が、また日本で起きかねない、ということ。

  理性的に考え、日本の、この美しい大地と海と空気をこれ以上汚さないために、原発の運転を止め、原発を廃炉にし、保有するプルトニウムをアメリカ、イギリスに渡すべきです。さもなくば、私たちに待ち受けるのは、国土の喪失です。北朝鮮の核ミサイルより差し迫った、現実的な驚異は、大地震と津波による、原発事故です。

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日本の保有46.9トンに

毎日新聞 2017年8月2日 東京朝刊

 内閣府は1日、2016年末時点で日本が国内外で保有するプルトニウムの総量が前年より約1トン減少し、約46.9トン(このうち核分裂性は約31.1トン)だったと国の原子力委員会に報告した。日本のプルトニウム保有量が減少したのは12年末以来。

 今回の減少の主な要因は、プルトニウムとウランの混合酸化物(MOX)燃料を利用するプルサーマル発電の関西電力高浜原発3、4号機(福井県)の再稼働によるもの。

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