福島県住民の初期被ばくを追う(1)

 福島県民の99%までが100ミリシーベルトまでの被ばくをしていない、と福島県立医大の山下俊一氏、鈴木眞一氏は言います。果たして、本当にそうでしょうか。

 このシリーズは福島県民の初期被ばくを追いながら、東京、茨城、千葉、埼玉などの住民の初期被ばくを追います。資料はまとまり次第公開します。

 これが、放射線医学総合研究所 栗原理氏の初期被ばく です。栗原氏は、2011年3月15日夜から3月18日まで、福島県福島市に滞在しました。そして、2011年3月18日以降は恐らく、千葉県千葉市にある放射線医学総合研究所に勤務していたと思われます。

 3つのシュミレーションがありますが、1つ目は2011年3月15日(福島市夕方滞在)、1回だけの内部被ばくです。2つ目は2011年3月15日から3月18日までの複数回に渡る内部被ばく(福島市滞在)です。3つ目は2011年3月15日から3月21日(福島市~18日、市川市19日~21日)までの複数回に渡る内部被ばくです。

 栗原理氏の上記資料を見ると栗原氏は、2011年3月23日の時点で、ヨウ素131 約530ベクレル蓄積していました。この数値は、その後、徐々にさがっていきます。1番目のシュミレーションでは、2011年3月15日一回だけの内部被ばくであったとするとこの日に3400ベクレルのヨウ素131を摂取したことになる、と書かれています。それは福島市での内部被ばくです。

 これは、福島市にいたすべての住民の内部被ばくに相当するかもしれません。「しれません」と書く理由は、栗原理氏は放射線医学総合研究所の理事です。屋外に出る場合に、N95のマスクくらい付けていた、と思われます。何も知らずに吸わされていた、福島市住民はこの栗原氏の数倍の内部被ばくをしたのではないでしょうか。

 2番目のシュミレーションでは、2011年3月15日から3月18日までの4日間に渡る内部被ばくで、合計2,800ベクレルを摂取、1日あたり710ベクレル摂取したことになる、と書かれています。それはすべて福島市での内部被ばくです。

 3番目のシュミレーションでは、2011年3月15日から3月21日までの7日間に渡る内部被ばくで、合計2,400ベクレルを摂取、1日あたり240ベクレル摂取したことになる、と書かれています。それは福島市4日間、千葉市3日間での内部被ばくです。

 以下、日本原子力研究開発機構が計算した、5つのモデルによる、ヨウ素131の地上大気中濃度(第1層濃度)の推移です(「事故初期のヨウ素等短半減期核種による内部被ばく線量評価調査」報告書 専門委員会検討委員会の会合記録 2013年)。A地点は福島第一原子力発電所で、B地点はその北西3~6kmの地点でのヨウ素131の地上大気中濃度の推移を示しています。2011年3月15日の2号機の爆発(6:14とされる)よりも、3月15日夜の方がヨウ素131が大量に放出されています。そのヨウ素131は8万ベクレル/m3を超えます。また、3月18日~25日にもそれぞれピークがあり、また、3月30日にも顕著なピークがあります。

 ちなみに、福島県民にはついぞ安定ヨウ素剤の服用指示を出しませんでした。いくつかの自治体で安定ヨウ素剤が配られていたにもかかわらず。双葉町、三春町、大熊町は独自の判断で住民に安定ヨウ素剤を服用させています。双葉町がもっと早く、当時川俣町に避難していた845人以上(40歳以下)に3月13日と3月14日に服用させています。3月15日、大熊町は三春町に避難していた町民340人に、三春町は13時~18時に7250人に服用させています。

 一方、福島県立医大の医師、看護師、そしてその家族は全員安定ヨウ素剤を服用しています。なぜならば、そうしなければ、福島県立医大附属大学病院から医師も看護師もいなくなるほどの放射能汚染だったからです。医師たちが逃げるのを見て、福島県から住民が避難してしまうことを恐れ、福島県立医大の医師や関係者には安定ヨウ素剤を服用させ、日本政府や福島県は、福島県民には「安定ヨウ素剤を服用するほどの放射能は出ていない」としたのです。

 原発事故後、県立医大では放射能への恐怖が渦巻いた。若い女性職員の不安は大きかったし、子どもを連れて避難したいという声も出た。「医大内の混乱を鎮めるために配布は必要だった」と医大病院の副院長、細矢光亮(54)は話す。細井の話を受け、16日には職員の子どもにも配ることが決まった。対象は15歳以下とされた。各部で職員の子どもの数をまとめ、必要分を病院経営課で渡すことにした。17日には看護部に358人分が配された。19日から21日にはそのほかの部署の子ども用に814人分を配った。子どもの服用基準は「爆発時」または「毎時100マイクロシーベルト以上」とした。配布の事実は外に漏らさないように、と口止めがされた。朝日新聞(プロメテウスの罠)医師、前線へ:19 服用の指示が出ない 2013年11月6日

 福島県民に安定ヨウ素剤の服用は必要ない、とした放射線医学総合研究所 明石真言理事は犯罪性はとても大きいと思います。2011年3月14日に放射性医学総合研究所がホームページ上に、「ヨウ素剤の服用によってはアレルギーなどの副作用をおこす場合もあります。また、安定ヨウ素剤は、放射性ヨウ素が体の中に入った場合のみに有効で、外部被ばくや他の放射性核種には効果がありません。従って、服用の必要があるかないかは、環境中への放射性ヨウ素の放出量から受ける被ばく量を推定し、医学的観点から決定すべきものです。」と見解を示し、「医師の立会いの下、指示がなければ安定ヨウ素剤を服用するな」と見解を示したのです。(東北地方太平洋沖地震に伴い発生した原子力発電所被害に関する放射能分野の基礎知識 放射線医学総合研究所 2011年3月14日 13時50分更新

 放射線医学総合研究所理事 明石真言氏は、朝日新聞の記者の取材に答えて、2013年6月「いま思えば、飲ませればよかった」と答えています。

 更に、2011年3月18日に、長崎大から福島県立医大に派遣された山下俊一氏は、医大職員向け講演会を行っています。この中で山下俊一氏は「安定ヨウ素剤は信仰だ」とまで語り、「20キロ圏、30キロ圏以西の被曝(ひばく)量はおそらく1ミリシーベルト以下。チェルノブイリと比べて被曝量が微量なので、日本政府も安定ヨウ素剤服用の指示を出さない。」と、福島県民への安定ヨウ素剤不要論をぶちあげていました。ところが、朝日新聞の記者の取材に答えて、国のSPEEDI(2011年3月23日公表)の計算図では、100ミリを超える地域が原発30キロ圏外にも大きく広がっているのを見て、山下俊一氏は「ありゃー、と思いました」。放射能汚染は山下氏の予想を大きく上回っていた、と。政府は安定ヨウ素剤の服用の是非の問い合わせがあれば、「避難するほどの事態であれば服用する。そのためのマニュアルですから」と答えただろうと山下氏は答えています。

 福島県のみならず、東北・関東一体に小児甲状腺がんの子どもたちが出ています。分かっているだけでも、福島県183名、宮城2人、茨城3人、神奈川3人、群馬、長野、埼玉、千葉、新潟1人。ヨウ素131のプルームが少なくとも、2011年3月12日から3月31日まで度重なり放出されたことを私たち市民は知りませんでした。少なくとも、3月31日までは、何度も安定ヨウ素剤を服用する必要があったのではないでしょうか。

 福島県民に安定ヨウ素剤を服用させなかった、放射線医学総合研究所 明石真言氏、長崎大学 山下俊一氏の犯罪性は明らかです。偽証罪および傷害罪で起訴されるべきではないでしょうか。

  是非、内部被ばくを考える市民研究会の会員にもなって下さい。会員には即日、内部被ばく通信をお送りします。年会費2000円です。お申し込みはこちらです。