福島に取材に入ったために鼻血がでるなら、毎日1mSv被ばくした、宇宙から帰還した若田光一船長は毎日鼻血を出すはずだ、という議論がありました。はい、若田光一氏が鼻血を出す事はありませんでした。

 宇宙飛行士は鼻腔の粘膜に、放射性物質が入ってくることはありませんし、宇宙食が放射性物質で汚染されていない限りは、体内の放射性物質の濃度が上がる事はありません。

 しかし、福島では福島市や郡山市でも大量の放射性物質が土中にあり、風とともに土ぼこりが舞いあがります。2013年10月1日福島駅前のイトーヨーカドーで購入した、福島県産梨を測定したところ、セシウム137が2ベクレル/kg検出されました。福島県に住み、福島県産の野菜、果物、肉を摂り続けていけば、鼻腔の粘膜に放射性物質がつき、血管の内側にアテローム硬化が起きる可能性があります。
 
 それが鼻血の原因となっていると思います。

 放射線医学総合研究所の市川龍資元副所長が、ビキニ事件の第五福竜丸の乗組員にも鼻血が出るという健康影響は出ていないと言っています(2014年5月13日 毎日新聞朝刊)。これはでたらめです。

 ビキニ事件の被ばく者、第五福竜丸の乗組員、大石又七さんが書かれた、『ビキニ事件の真実』みすず書房2003年 のpp.41にこういう記述があります。

「しかし、被爆から6週間が過ぎた頃から、急にこれまで感じていなかった『だるさ』が襲ってきた。骨髄が放射能に犯され、白血球、赤血球、血小板が激減してきていたのだ。
 耳や腕、骨髄穿刺で胸骨、腸骨、背骨からも骨髄細胞を何度も取り出しては検査する日々がつづいた。通常15万前後ある骨髄細胞数が1万から2万台、白血球数は健康な人で7000から8000あるものが1000を割って100台に下がるものも出てきた。
 赤血球も400万以下に激減してきた。血小板は血液の凝固に欠くことができないもの、通常20万から90万が1万から2万に減り、そのため腹中出血が血便となって出てきた。発熱と同時に、鼻血、歯茎からの出血、皮下出血。腸や腎臓からの出血も認められるようになり、下痢もなかなか止まらない。放射線の影響をいちばん受けやすい生殖細胞は、当然のように数百に減った者や、無精子の者まで出てきた。」
 
-大石又七『ビキニ事件の真実』みすず書房2003年 pp.41

 また、pp.38にはビキニ事件の被ばく者、第五福竜丸の増田三次郎さんの体調悪化について、以下の記述があります。

「現在のところ、生命の心配はないが、長い将来にかけてはガンの発生も懸念される。また、化学分析の結果では、ジルコニウム、ニオブ、テルル、ヨウ素、中でも強力なベータ線を出し半減期29年という持続性を持つストロンチウム90の存在がほぼ確かめられたので、これを有効に体外に取り出す方法がない現在、極めて心配だ。」同書 pp.38

「(1954年)3月27日、白血球数が2000台に下がっている者が3人、この3人の体表放射能は、上頭部が毎時2.4ミリレントゲン(=21マイクロシーベルト/時)であった。増田三次郎さんの頭髪には6~9ミリレントゲン(=52~78マイクロシーベルト/時)、自らの頭から約15000カウントの放射能を出していた。」同書 pp.38-39

 ちなみに、原発事故当時、福島県で原発周辺から避難された方が、からだ表面の放射能汚染をスクリーニング検査で測定されています。その時に13000カウント(cpm)を超える数値が出たかたは2011年3月12日および3月13日だけで901人います。13000カウント(cpm)は甲状腺等価線量100ミリシーベルトに相当すると、原子力安全委員会も認めていたため、この13000カウントを除染基準としていたのですが、福島県は除染に使うお湯が作れない、寒さから除染に伴う健康被害の方が大きい、という理由で、除染基準を10万カウント(cpm)に引き上げてしまいます。2011年3月14日からです。それでもこの10万カウント(cpm)を超える被ばくをした方が102人いた、と報告されています。

東京電力福島原子力発電所における事故調査・検証委員会 中間報告 20111226

 つまり、福島県住民でも、ビキニ事件の被ばく者と同じ程度の被ばくをした方がいる、ということではないでしょうか?ビキニ事件の被ばく者が、のちに「だるさ」を覚え、発熱と同時に、鼻血、歯茎からの出血、皮下出血。腸や腎臓からの出血もあったように、福島の住民の中にも同じ症状を訴える者がいても何ら不思議ではありません。

 これを、福島県も、双葉町も、環境省も、認めないのです。まさに、内部被ばく無視の住民切り捨てだと思います。彼らは被ばく者が死ぬのを待っているかと、疑いたくなります。

 だいたい、ミリシーベルトで住民の健康被害を想定すること自体、間違っています。外部被ばくと内部被ばくを足し算で考えることなど、人体の仕組みをまったく無視する暴論です。

 宇宙飛行で188日間いた若田さんは188ミリシーベルト相当を外部被ばくしたことになります。しかし、宇宙飛行で188ミリシーベルト浴びるのと、年間1ミリシーベルト超えの福島県の地域で生活するのとを比べると、年間1ミリシーベルト超えの方がリスクが明らかに高いです。それがベラルーシ、ウクライナ、ロシアの現実です。

 ビキニ事件で被災した方がた、チェルノブイリ原発事故で被災した方々、の健康被害にしか、本当の真実はありません。