原発事故前から降ってきていた放射性物質(天然核種)とは何か?

 日本国際問題研究所 軍縮・不拡散促進センターが2012年5月21日に公表した「CTBT高崎放射性核種観測所の粒子状放射性核種の観測結果」によれば、群馬県高崎市にあるCTBT高崎放射性核種観測所で空気を分析すると、以下の放射性物質が、原発事故以前から観測されていました。

 これらは、東京第一原発事故以前から降下していた放射性物質(天然核種)であると考えてよい、と思います。

 それは、宇宙線起源核種の7Be(ベリリウム-7)、原始放射性核種の40K(カリウム-40)、ウラン系列核種の214Pb(鉛-214)、214Bi(ビスマス-214)、226Ra(ラジウム-226)、234mPa(プルトアクチニウム-234m、トリウム系列核種の208Tl(タリウム-208)、212Pb(鉛-212)、212Bi(ビスマス-212)、228Ac(アクチニウム-228、そしてアクチニウム系列核種の235U(ウラン-235)です。〔日本国際問題研究所 軍縮・不拡散促進センターの分析による〕

出典:CTBT高崎放射性核種観測所の粒子状放射性核種の観測結果 20120521

 以下のその天然核種のスペクトル(上の黒)と東京第一原発事故によって放出された人工核種セシウム134、137のスペクトル(下の赤)を掲載します。

 以上のように2013年12月27日に書きましたが、どうもウラン235が天然核種というのが納得がいきません。そんなにウラン235が日常普段に大気中に舞っていて、検出されるものなのでしょうか?Ra226とごっちゃにされていることが大きなる疑問。CTBT高崎ではU235とRa226とを判別できないのでしょうか?上の黒のスペクトルでは186 keV(キロ エレクトロン ボルト)のところにU235+Ra226と書いてあります。これら2つを判別しないで両方ともあるものとする、という意味です。

表1 Ra-226とU-235の核データ

      エネルギー                エネルギー

      (放出比%)               (放出比%)

Ra-226  186keV(3.3%)     U-235    144 keV(11 %)

                           163 keV(4.7%)

                           186 keV(54 %)

                           205 keV(4.7%)

 『低バックグラウンド型Ge半導体検出器を用いた土壌中のU-238,Ra-226同時迅速分析法』(岡山県環境保健センター年報 30,67-71,2006 道広憲秀 宮闢 清 清水光郎 信森達也〔放射能科〕)の資料を読むと、「U-235には,144keVに単独ピークがあるのでこれを用いて,妨害補正を行なっ」とあります。(上記の表1も同資料より)CTBT高崎のスペクトルデータの記載にある144keV付近の分析をすれば、簡単にわかることではないのでしょうか?……2013年12月30日 追記

 また、高崎CTBTの下の赤のスペクトルは原発事故後1年2カ月も経った、2012年5月5日から5月6日に捕集された試料のものです。原発事故が起きた2011年3月のスペクトルはとんでもないものであったと想像されます。少なくとも、空気から高崎観測所で観測された放射性物質は、セシウム134、セシウム136、セシウム137、ヨウ素131、ヨウ素132、バリウム140、ランタン140、テクネチウム99m、テルル129、テルル129m、テルル132です。これらのスペクトルデータも公開するべきです。

 以下は日本国際問題研究所 軍縮・不拡散促進センターが2011年4月23日直後に公表した「高崎に設置されたCTBT高崎放射核種観測所における放射性核種探知状況(2011年4月23日時点)」のデータです。これらのスペクトル・データを公表してほしいと思います。言葉にならないものだと思います。

 また、アメリカ合衆国エネルギー省 国家核安全保障局(DOE/NNSA)の福島第一原子力発電所事故による土壌調査では、ガンマ線を出さないストロンチウム89、ストロンチウム90、ウラン232、ウラン233/234、ウラン235、ウラン238、プルトニウム236、プルトニウム239/240、プルトニウム241などが検出されています。

【出典】アメリカ合衆国エネルギー省 国家核安全保障局 

US DOE/NNSA RESPONSE TO 2011 FUKUSHIMA INCIDENT- DATA AND DOCUMENTATION FieldSampleSoilResults.csv

 日本政府は2011年3月、4月、5月の空気に、こうしたベータ線核種、アルファ線核種がどれくらい含まれていたかを公表すべきです。 

<アメリカ合衆国エネルギー省 国家核安全保障局(DOE/NNSA)>2011年3月12日直後から、福島県のみならず、米軍の活動範囲で土壌採取、ガンマ線核種のみならず、ベータ線核種、アルファ線核種を測定して公表しています。以下のDOE/NNSAが測定した土壌中のウラン232のデータを掲載します。神奈川県横須賀市米軍海軍基地内、静岡県御殿場市米軍キャンプ富士、福島県いわき市小名浜港、福島県楢葉町Jビレッジ、宮城県仙台空港でウラン232が72.16ベクレル/kg~73.61ベクレル/kg。

<ウラン232とは>通常の軽水炉で使用されている濃縮ウランは、天然ウランを濃縮することにより得られるため、ウランの組成はウラン238、ウラン235と微量のウラン234で構成されています。このウラン燃料を原子炉内で燃焼させた場合、燃焼につれてウラン232、ウラン236などの核種が生成されます。また、ウラン234の含有量が増加します。これらの核種の生成は、炉内での燃料の出力および燃焼度の履歴によって影響を受けるため、再処理される使用済燃料の出力、燃焼度の履歴の違いにより、得られる回収ウランの組成にばらつきが生じます。

 ウラン232は、天然ウランには含まれない核種で、半減期が短く(68.9年)、娘核種として高放射線核種(タリウム208、ビスマス232)を生成するため、回収ウランの線量率を上昇させます。

<米軍 宮城県仙台空港に拠点 2011年3月30日>大津波が直撃し土砂やがれき、車などが押し寄せて空港の機能が停止した仙台空港。地震­から20日近くがたち、がれきや車両の撤去も進み、空港の機能復旧は急ピッチで進んで­いる。これは数多くの重機を運び込んで作業にあたった在日米軍のおかげである。そのため滑走­路の供用も早まり、仙台空港を物資輸送の拠点にすることができた。3月29日に撮影した仙台空港。在日米軍の撤去作業により車や瓦礫は片付けられていた­。