政策提言
山本太郎と女性サポーターズの8.30集会
                2013年8月30日(金) 参議院会館講堂  13:00~15:00
                提案:内部被ばくを考える市民研究会 川根 眞也
                メールアドレス:kawane@radiationexposuresociety.com
                ホームページ:http://www.radiationexposuresociety.com/

【政策の概要】
1.空間線量0.23マイクロシーベルト/時は年間被ばく1ミリシーベルトではない。強制移住のレベル。年間被ばく1ミリシーベルトは外部被ばく+内部被ばくで計算。政府は強制移住のレベルを決定し、住民の明らかな健康被害を避ける行政措置を発効すべき。

2.18歳未満立ち入り禁止、妊娠する可能性のある女性の立ち入り禁止、飲食禁止の「放射線管理区域」は空間線量0.6マイクロシーベルト/時ではない。空間線量0.13マイクロシーベルト/時相当。政府は学校閉鎖の基準を決定し、「放射線管理区域」での教育活動をやめて、生徒を疎開させるべき。

3.全国で学校給食の食材の検査を実施すべき。政府は現在の市民のみならず、未来の子どもたちを健康被害から守るべき。1.0ベクレル/kg以下のレベルまで学校給食の食材を測定するべき。

4.政府の責任ですべての原発労働者の健康管理を行うカルテを作成し、少なくとも年1回の健康診断を行うべき。事故から2年半、原発労働者の死亡者数を公開すること。政府は東電OBの退職金の財源を中心に、被ばく限度量100ミリシーベルト(5年間積算)を超えた原発労働者の生涯賃金を支払うこと。

○ 山本太郎さん後援会、という固い名称ではなく、山本太郎サポーターズ倶楽部のような親しみやすい名前を付けた会を作ってほしい。

1.空間線量0.23マイクロシーベルト/時は年間被ばく1ミリシーベルトではない。強制移住のレベル。年間被ばく1ミリシーベルトは外部被ばく+内部被ばくで計算。政府は強制移住のレベルを決定し、住民の明らかな健康被害を避ける行政措置を発効すべき。
ベラルーシでは許容値として1ミリシーベルトが定められています。これは内部被ばく換算で計算されています。年間等価線量(内部被ばく)。2004年測定結果ではセシウム137 Ⅰ~5キュリー/km2(同3.7万~18.5万ベクレル/m2)の地域住民の外部被ばくと内部被ばくは以下のようになりました。
  外部被ばく  0.62ミリシーベルト
  内部被ばく  0.40ミリシーベルト
  合計     1.02ミリシーベルト
 しかし、これはあくまでも平均化されたもので、人それぞれに被ばく線量は変わってきます。セシウム137 1~5キュリー/km2(同3.7万~18.5万ベクレル/m2)の地域と言っても、森や川にはたくさん放射性物質があります。日本でも山を歩いたり、森や川の物を取ったりして食べる人は高い外部被ばく、内部被ばくをすることになります。(ベラルーシ・プロジェクト報告 p.6)ベラルーシでは年間1ミリシーベルトを超える地域は計画的移住区域に指定されています。

 日本政府は、空間線量0.23マイクロシーベルト/時を年間被ばく線量1ミリシーベルトとしています。
 この計算方法は以下の通りです。0.23マイクロシーベルト/時の内訳は以下の通りです。
 自然放射線  0.04マイクロシーベルト/時
 原発事故による放射性物質による空間線量 0.19マイクロシーベルト/時
で合計0.23マイクロシーベルト/時です。
0.19マイクロシーベルト/時でなぜ1ミリシーベルトになるのでしょうか?政府は、1日8時間屋外、16時間屋内で生活すると想定しています。
1日 8時間 屋外            0.19×8時間
16時間 屋内 ※コンクリートの家屋内では屋外の40%の空間線量になると想定
                  0.19×0.40(40%ということ)×16時間
 1日の合計×365日=年間外部被ばく線量=(0.19×8+0.19×0.40×16)×365
                    =996マイクロシーベルト
                    =0.996ミリシーベルト
                    ≒1ミリシーベルト
 以上から、空間線量0.23マイクロシーベルト/時が年間被ばく1ミリシーベルトとしています。

日本政府は外部被ばくだけで1ミリシーベルトを推定するという間違いを犯しています。そして、屋内は屋外の40%になるという想定は現実には間違っています。屋外とほぼ同じというところもたくさんあります。少なくとも屋内の空間線量が屋外の80%になっている地域がたくさん存在します。人によって、屋外での生活時間は異なります。住民の実測値によって、被ばく線量を推定すべきです。
ベラルーシのように、住民のガラスバッジ等での外部ひばく線量測定や、ホール・ボディー・カウンター(WBC)での内部被ばく年間等価線量の実測値に基づき、「外部被ばく」+「内部被ばく」で1ミリシーベルト相当とする地域を指定し、住民の移住を行うべきです。
ウクライナ、ベラルーシ、ロシアのチェルノブイリ事故後の27年間の教訓は、年間被ばく1ミリシーベルトのレベルで明らかな健康被害が出ている、ということです。
日本政府は土地汚染(ベクレル/m2)によって年間被ばく1ミリシーベルト(外部被ばく+内部被ばく)相当する地域を指定し、住民の強制および計画的移住を行うべきです。

2.18歳未満立ち入り禁止、妊娠する可能性のある女性の立ち入り禁止、飲食禁止の「放射線管理区域」は空間線量0.6マイクロシーベルト/時ではない。空間線量0.13マイクロシーベルト/時相当。政府は学校閉鎖の基準を決定し、「放射線管理区域」での教育活動をやめて、生徒を疎開させるべき。
 「放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律による管理区域」(平成十二年科学技術庁告示第五号、最終改正 平成二十一年十月九日 文部科学省告示第百六十九号 第四条)の定める「放射線管理区域」とは4つの規定があります。
1.外部被ばく線量が3カ月で1.3ミリシーベルト
2.空気中の放射性物質の濃度 セシウム137の場合 3000ベクレル/m3
3.その場所の表面汚染度 セシウム137の場合 40000ベクレル/m2
4.外部被ばくと空気中の放射性物質の吸入による内部被ばくがある場合 それぞれの基準値の和が1 
<例> 外部被ばく3カ月で0.65ミリシーベルト、空気中のセシウム137 1500ベクレル/m3
(参考) 『放射線管理区域 18歳未満立ち入り禁止』
     http://www.radiationexposuresociety.com/archives/1593

 これを1の項目だけで考えて空間線量0.6マイクロシーベルト/時が「放射線管理区域」
と紹介する事例が散見されます。しかし、これは間違いです。その計算とは
 「外部被ばく線量が3カ月で1.3ミリシーベルト」
 ⇒ 1.3×1000(これでマイクロシーベルトの単位になる)÷90日(3カ月)÷24時間
  =0.60マイクロシーベルト/時
 これはX線技師などが0.1ミリシーベルトに相当する被ばくを何回も受けることを想定した「放射線管理区域」の基準です。原発事故で問題にすべきは3のその場所の表面汚染度40000ベクレル/m2です。
 そして、セシウム137の表面汚染度が40000ベクレル/m2に相当する空間線量は、高さ1mで0.13マイクロシーベルト/時です。
 下は2011年5月24日の原子力委員会の資料です。(原子力発電環境整備機構NUMO 河田東海夫フェローが作成)

 

37kBq/m2(キロベクレル/m2)
=37000ベクレル/m2
≒40000ベクレル/m2
  ↓
空間線量
0.13マイクロシーベルト/時
と解説している。
 空間線量が0.6マイクロシーベルト/時が「放射線管理区域」とすることは、政府の基準をぬるくする効果しかありません。先にも書いたように、0.23マイクロシーベルト/時はウクライナ、ベラルーシ、ロシアでは計画的移住区域のレベルです。「放射線管理区域」をはるかに超える規定となっています。
 「放射線管理区域」は空間線量0.13マイクロシーベルト/時相当の地域です。政府は学校閉鎖の基準を決定し、「放射線管理区域」での教育活動をやめて、生徒を疎開させるべきです。

3.全国で学校給食の食材の検査を実施すべき。政府は現在の市民のみならず、未来の子どもたちを健康被害から守るべき。1.0ベクレル/kg以下のレベルまで学校給食の食材を測定するべき。
 全国の学校給食の食材の放射性物質濃度を測定する動きが広がっています。福島県庁の食堂の食材の検出限界は1ベクレル/kg。札幌市教育委員会は学校給食の食材は4ベクレル/㎏の検出限界まで測定し、1度検出された食材はその後使わない方針。(2011年12月1日より)港区教育委員会は1週間ごとに給食と牛乳と検出限界0.7ベクレル/kgまで測定。
一方、東京都23区内でも学校給食の食材の検査を年3回しかやらない区や年1回しか給食まるごと検査をやらない区など、まったくひどい区が多くあります。
学校給食まるごと(1週間分または1食分)の検査を行っている区
区  学校給食まるごとの放射性  セシウム134検出限界    放射性セシウム合計  
   物質濃度検査の年間回数   セシウム137検出限界     検出限界
千代田区       年1回    それぞれ1ベクレル/kg  1ベクレル/kg
港区    年1回・未実施校あり それぞれ0.7ベクレル/kg  1.4ベクレル/kg
新宿区        年4回    それぞれ10ベクレル/kg    25ベクレル/kg
文京区   年1回・未実施校あり それぞれ10ベクレル/kg    20ベクレル/kg
台東区        年4回    それぞれ 5ベクレル/kg    10ベクレル/kg
墨田区        年11回   それぞれ6~8ベクレル/kg  13~15ベクレル/kg
品川区        年3回   それぞれ0.9~1.1ベクレル/kg 1.8~2.2ベクレル/kg
大田区 学校年3回 保育施設年1回 それぞれ 5ベクレル/kg    10ベクレル/kg
世田谷区       年1回?  それぞれ3.3~3.9ベクレル/kg 7.2~7.6ベクレル/kg
渋谷区        年3回   それぞれ1.1~1.8ベクレル/kg 2.6~3.3ベクレル/kg
杉並区        年2回   それぞれ0.3~0.5ベクレル/kg 0.7~1.0ベクレル/kg
豊島区   年1回・未実施校あり それぞれ1.4~1.9ベクレル/kg 2.9~3.8ベクレル/kg
北区         年2回    それぞれ 5ベクレル/kg    10ベクレル/kg
荒川区        年3回    それぞれ25ベクレル/kg    25ベクレル/kg

学校給食の食材の検査を行っている区
区  学校給食の食材の放射性   セシウム134検出限界    放射性セシウム合計  
   物質濃度検査の年間回数   セシウム137検出限界     検出限界
中央区        年3回    それぞれ25ベクレル/kg    25ベクレル/kg
江東区   年1回・未実施校あり    それぞれ6~8ベクレル/kg 25ベクレル/kg
目黒区      年6回1品目 それぞれ3.8~6.2ベクレル/kg 7.7~12.1ベクレル/kg
練馬区        年1回    それぞれ8~10ベクレル/kg  25ベクレル/kg

学校給食の食材、学校給食まるごと放射性物質濃度の検査を行っていない区
中野区「区として給食食材中の放射性物質の検査は実施していません」
板橋区「東京都教育委員会においても学校給食用食材の放射性物質検査を実施しており、板橋区もこの事業に参加しています。」抽出検査のみ。
足立区 2012年1月 区内を5つのエリアに区分し、各エリアから小学校・中学校・保育園各1施設、合計15施設で検査したのみ。
葛飾区 2012年度 調理済み給食・牛乳の放射性物質検査年1回を行ったが、2013年度は行わない。
江戸川区 学校給食の食材、学校給食まるごと放射性物質の検査を一度も行っていない。江戸川は14歳までの子どもの人口が、約9万4,000人(2012年1月現在)。東京23区では世田谷に次いで多い。

『札幌市 学校給食の食材4ベクレル/kg以上の放射性物質がでたものは使わない』
http://www.radiationexposuresociety.com/archives/1599
『福島の県庁食堂ではキロ1ベクレル、小学校給食はキロ10ベクレルが規制値。』
http://www.asyura2.com/13/genpatu32/msg/557.html

 特に中野区の『福島第一原発事故に伴う放射線に関する情報』のページの内容がひどいです。放射性セシウムと自然放射能カリウム40とをごっちゃにして説明しています。
『中野区 福島第一原発事故に伴う放射線に関する情報』
http://www.city.tokyo-nakano.lg.jp/dept/402000/d012663.html
 食品と暮らしの安全基金の小若順一氏は4回のウクライナ調査(第1回2012年1月~第4回2013年3月)で、手足の関節が痛い、頭痛がして夜眠れない、鼻血が出る、自立神経失調症になる、風をひきやすい、といった健康被害が出る食品汚染のレベルが少なくともセシウム137で1.1ベクレル/kgであることを明らかにしています。

『食品と暮らしの安全基金 第4回ウクライナ調査報告』
http://tabemono.info/report/chernobyl.html

 政府は現在の市民のみならず、未来の子どもたちを健康被害から守るために、全国で学校給食の食材の検査を実施すべきです。セシウム137が検出限界1.0ベクレル/kg以下のレベルまで学校給食の食材を測定するべきです。

4.政府の責任ですべての原発労働者の健康管理を行うカルテを作成し、少なくとも年1回の健康診断を行うべき。事故から2年半、原発労働者の死亡者数を公開すること。政府は東電OBの退職金の財源を中心に、被ばく限度量100ミリシーベルト(5年間積算)を超えた原発労働者の生涯賃金を支払うこと。
 すでに原発事故から2年と半年がたち、東京電力福島第一原子力発電所の事故処理作業を行っている原発作業員は実数で5万人、のべ人数では30万人にも達しようとしています。2013年8月5日の朝日新聞は、「東電の集計によると、福島第一原発で2011年3月11日の事故から同年12月末までに働いた1万9592人の累積被曝線量は平均12.18ミリで、約5割にあたる9640人が5ミリ超の被曝をした。この人たちは白血病を発病すれば労災認定される。今年6月末には累積で5ミリ超の被曝をした人は1万3667人になった。今後も汚染水対策など被曝の恐れが高い作業が予定され、白血病の『年5ミリ以上』の労災基準に該当する人は増え続けるとみられる。」と報じています。
 チェルノブイリ原発事故後、除染作業にあたったリクビダートルは、数年から10数年後には明らかな健康被害にあっています。ベラルーシ。「検査を受けた53人のリクビダートル(24歳~41歳)のうち、1990年~1991年(事故から4、5年後)にかけては11人が、1993年から1998年(同7年後から12年後)にかけて26人が認定障害者に登録された。2004年(事故から18年後)には生存していた患者全員が障害者認定を受けた。」(調査報告 チェルノブイリ被害の全貌 岩波書店 2013年4月26日 p.38)

 

 

 ウクライナ。チェルノブイリ原発事故後、除染作業員(リクビダートル)は事故から5年後には非悪性腫瘍の障害者として認定される人が目立って増え(1991年)、1992年には1000人に75人、1994年には1000人に140人、2000年には200人、つまり5人に1人が障害者となった。
(調査報告 チェルノブイリ被害の全貌 岩波書店 2013年4月26日 p.42)
 政府の責任ですべての原発労働者の健康管理を行うカルテを作成し、少なくとも年1回の健康診断を行うべきです。そして、作業中の死亡者は報道されても、宿舎での突然死や労働契約期間外での死亡が計算に入っていません。すべての原発労働者の死亡者数を公開すべきです。被ばく限度を超えると首切りになる事態はさらなる、被ばく隠しを産み、過酷な条件へと労働者を追い込むだけです。政府は東電OBの退職金の財源を中心に、被ばく限度量100ミリシーベルト(5年間積算)を超えた原発労働者の生涯賃金を支払うべきです。

○ 山本太郎さん後援会、という固い名称ではなく、山本太郎サポーターズ倶楽部のような親しみやすい名前を付けた会を作ってほしい。