農林水産省が2012年3月28日「きのこ原木及び菌床用培地の当面の指標値の設定について 一部改正」を通知しています。これによると、

きのこ原木、菌床用培地等の当面の指標値(放射性セシウムの濃度の最大値)
(1)きのこ原木及びほだ木 50ベクレル/ kg(乾重量)
(2)菌床用培地及び菌床 200ベクレル/ kg(乾重量)

 までがOKということになっています。これまでは、

(1)きのこ原木     150ベクレル/ kg(乾重量)
(2)菌床用培地            150ベクレル/ kg(乾重量)

までがOKになっていました。(農林水産省「きのこ原木及び菌床用培地の当面の指標値の設定について」2011年10月6日)

 きのこが原木や菌床、ほだ木の放射性セシウムを濃縮する性質があるということを農林水産省は知らなかったのでしょうか?

 また、福島県にだけ、「きのこ生産資材用のおが粉等並びに調理加熱用の薪及び木炭の安全確保の取組について」(2011年8月12日)という通知を出し、原発事故による放射性物質がかかった可能性のある原木やきのこ生産用のおが粉、並びに調理加熱用薪および木炭を使うのを自粛しろ、と言ってきました。

 東北、関東、東海にも放射性の汚染があります。福島県だけに通知を出したのは間違っています。埼玉県でも鳩山町、ときがわ町、横瀬町、皆野町の野生きのこが基準値100ベクレル/kgを超えています。東北、関東、東海の地域でも原木やほだ木の放射性物質の濃度を検査する必要があります。

埼玉県 森林に自生する「野生きのこ」放射性物質モニタリング調査結果 20121109

 また、中国・四国地方の原木栽培生しいたけが安全とは限りません。福島県は日本有数の農業国であり、しいたけなどの原木の多くが福島県産です。「農林水産省 きのこ原木の調査状況 2012年8月17日」を見ると、島根県の原木は99%島根県産で、1%が大分県ですが、広島県の原木は82%が広島県産で、残り18%が他県。そのうちの50%が島根県、34%が福島県、7%が宮崎県産です。徳島県の原木も87%が徳島県産ですが、残りの13%の内、福島県産が38%、香川県が34%、愛媛県が28%を占めます。

 東北、関東の原木にいたっては、8割以上、自分の県産の原木を使っている県は岩手、宮城、福島、栃木、群馬だけであり、これらの地域の森林の多くが高濃度に放射能に汚染されています。(岩手県は南部のみ)他都県の東北、関東の原木は第1位に依存していたのが福島県産の原木です。原木栽培しいたけや、乾燥しいたけは、東北、関東のみならずず、原木の産地まで調べてみないと、その汚染度はわかりません。

 広島県三次市で生産された原木栽培生しいたけから380ベクレル/㎏の放射性セシウムが検出されています。(2012年7月31日)

広島県 三次市で生産された生しいたけからの放射性セシウムの検出について 20120802

 少なくとも学校給食には、原木の産地まで明記したきのこを出すべきです。

農林水産省 きのこ原木の調査状況 20120817

<番外編>

 埼玉県浦和駅西口のイトーヨーカドーの近くのお店で徳島県産菌床生しいたけが売られていました。「確かほとんどの原木は徳島県産だった」と思い、4袋購入。後で上の資料を見たら、県外産のものが13%もあり、その3分の1が福島県産だったことにショックを受けました。(13%のうちの38%が福島県産、つまり13×0.38=4.94%が福島県産)さいたまラボさんに1袋検査してもらいました。54000秒測定(なんと15時間です!)でも、セシウム134(検出限界2.29ベクレル/kg)、セシウム137(検出限界2.56ベクレル/kg)ともに不検出でした。徳島県産生しいたけ 新野KK さんのものは安全なようです。 

徳島県産生しいたけ ND 20121223 pdf