〈解説〉

 2021年から、東電は、福島第一原発2号機の核燃料デブリを取り出す計画、と報じました。「おい、おい。何言っているんだ?」という感じです。「2号機は水位が約30cmと低く、取り出しが容易」と解説も、図中に書かれています。

 東電の資料を調べてみても、今、核燃料デブリがどこにどのような状態にあるのか、分かった、という資料はありません。核燃料デブリがどこに、どのような状態であるのか、分からないのに、取り出せる訳がありません。だいたい、何故、水位がそんなに低いのですか?今まで1日何百トンもの冷却水を投入してきたのに。東電は、今年の5月13日から、2号機の注水停止実験を行いました。

[参考]

2号機燃料デブリ冷却状況の確認試験の結果(速報)について 2019年5月20日 東京電力

 疑問なのは、核燃料デブリがたった8年2ヶ月で冷える訳がないですから、何故、注水を停止できるのか、です。合理的な結論は、核燃料デブリがもう建屋の地下1階にもないから。核燃料デブリはコンクリートを溶かし、地下にドンドン潜り込んでいて、上から注水、冷却しようとも効果ないから、です。

 もし、この仮説が正しいなら、核燃料デブリは、2号機の地下にあります。地下にまでどんどん潜り込んでいている核燃料デブリを取り出す方法などあるのでしょうか?

 少なくとも、東京電力が、2号機の核燃料デブリがどこに、どのような状態であるのか、公表しない限り、「2021年にロボ投入」は、単に、ロボットを入れただけで終わるでしょう。 

 読売新聞は、真実を隠す新聞だ、とつくづく思います。読売新聞読むと、世の中が分からなくなります。

 ちなみに、新聞紙面では、上記のように「デブリ除去、2号機から 政府・東電 21年にロボ投入」ですが、なぜか、読売新聞電子版では「デブリ除去、『安全・確実』な2号機から…ロボ投入も」となっています。読売新聞が勝手に「安全・確実な」を入れたのでしょうか?それとも、東京電力がそう説明した、のでしょうか?どちらにしても、説得力のない、形容詞です。また、2019年7月25日読売新聞朝刊が印刷された後、「安全・確実な」という言葉が挿入された、のです。どこからかの、圧力によって。

写真 誌面 2019年7月25日 読売新聞 朝刊 1面

写真 電子版 2019年7月25日 読売新聞 朝刊 1面

デブリ除去、2号機から 政府・東電21年にロボ投入

2019年7月25日 読売新聞 朝刊 1面

 政府と東京電力は、福島第一原子力発電所2号機で2021年、核燃料デブリの取り出しを始める方針を固めた。廃炉に関する技術的な助言を政府に行う専門機関が来月にも、この方針を盛り込んだ技術戦略プラン(概要版)を発表し、具体的な工法の検討に入る。廃炉の成否を左右するデブリ取り出し作業に向け、準備が本格化することになる。

 福島第一原発1~3号機は2011年3月の事故で炉心溶融(メルトダウン)が起き、現在、廃炉作業が続いている。2号機では、原子炉格納容器の底部でデブリとみられる小石状の堆積たいせき物を確認し、機器でつまんで動かすことにも成功している。一方、1号機は格納容器外側の放射線量が高いため、内部調査が難しくデブリをまだ確認できていない。3号機は格納容器内の水位が高く、取り出し作業が困難な状況にある。

 政府に技術面の提言をする「原子力損害賠償・廃炉等支援機構」は各号機の状況を検討した上で「2号機は他号機よりも取り出し作業が安全、確実に進められる」と判断。技術戦略プランに、最初に取り出す号機は2号機と明記する方針だ。

 これを受け、政府と東電は、デブリの取り出しを21年に2号機から始める方針を今年度中に正式決定し、廃炉工程表に盛り込むことを検討する。今年度後半にもデブリを試験的に少量採取し、取り出しに向けての課題を調べる。

 政府や東電は、格納容器の側面にある穴からデブリ取り出し用のロボットアームを投入する方法を検討している。アームは現在、英国などで開発中だ。今後、アームの詳しい仕様や準備工事の内容、作業員の訓練計画の検討を本格化させる。

 戦略プランでは最初の取り出しは小規模にとどめ、デブリを入れた容器を敷地内の別の建屋に仮保管する方針も盛り込む。本格的な取り出しは、デブリの性質を見極めた上で進める。

 同機構に協力する専門家の一人は「2号機で得られた経験を他の号機にも生かすべきだ」と話している。 

 ◆核燃料デブリ=事故で高温になった核燃料が、燃料を覆う金属管や炉内の配管などと共に溶けた後、冷えて固まったもの。事故の状況によって形状や組成、硬さが異なる。 

[解説]長い道 安全対策万全に

 東京電力福島第一原発1~3号機にある核燃料デブリの総量は推定で800トンを超える。廃炉完了まで約30年。デブリを最初に取り出す号機の決定は、長いデブリ処理の道のりの第一歩に過ぎない。

 デブリが広がる原子炉格納容器の内部の放射線量は、人が入れば死に至るほどの高さだ。遠隔操作のロボットを使わないと、内部を見ることすらできない。

 2号機ではデブリらしき堆積(たいせき)物が確認されているが、カメラで撮影できた範囲に限られ、全体像はつかめていない。実際には、格納容器底部のコンクリートの床に浸食するなど、取り出しが極めて難しいデブリが大量に存在するとみられる。取り出しは、世界でも例のない困難な作業になる。

 作業では、放射性物質の漏えいや、核分裂反応が連続する臨界が起きないよう、万全の対策が求められる。危険なく、かつ迅速に進めるには、安全性を監視する原子力規制委員会によるチェックや関係機関での情報共有も欠かせない。 (科学部 井上亜希子、稲村雄輝)

 〈解説〉

 また、2019年7月25日読売新聞朝刊3面には、以下の記事も。東電 福島第一原発の廃炉を、浜岡原発1,2号機と比べるなど、能天気ぶりを発揮しています。比べるなら、メルトダウンした、アメリカ、ペンシルバニア州のスリーマイル島原発事故と、メルトダウンから原子炉にが大爆発し、1週間も火災が続いた、旧ソ連のチェルノブイリ原発事故でしょう。

 読売新聞、読むと、世の中が分からなくなります。

[スキャナー]福島第二原発 廃炉作業 課題山積み…第一と並行 東電に重荷

2019年7月25日 読売新聞 朝刊 3面

東電が廃炉を表明した福島第二原発(2018年2月、読売機から)東電が廃炉を表明した福島第二原発(2018年2月、読売機から)

 東京電力ホールディングス(HD)が、福島第二原子力発電所1~4号機全ての廃炉を決断した。2011年の東日本大震災から8年を経て、福島第一原発と合わせて福島県内の原発10基全てが廃炉となる。今後長期にわたる廃炉作業や福島第一の敷地内の処理水など課題が横たわる。 (経済部 畑仁優鋭、福島支局 服部牧夫)

 

 区切り

 「4基の廃炉は例がなく、時間を要していたが、おおむねめどが立った。地域のご理解とご協力が何よりも大切だ」

 24日夕方、福島県庁で内堀雅雄知事と面会した東電の小早川智明社長は、福島第二の廃炉を決定する方針を伝えた。内堀氏は「重く受け止める。県内の原発の全基廃炉実現に大切な一歩だ」と応じた。

 震災後、東電は福島第二の廃炉について判断を先送りしてきた。再稼働できれば、その利益を賠償や除染、福島第一の廃炉費用などに充てたいとの思惑があったためだ。廃炉に30~40年を要するとされる福島第一の廃炉作業を優先させたいとの意向もあった。

 しかし、福島県や地元自治体は、福島第二の廃炉を求める決議を相次いで可決。東電や経済産業省内で再稼働は不可能との認識が広まった。

 昨年6月の廃炉方針表明から決定までに1年以上かかったのは、廃炉によって費用負担が増え、経営を圧迫する懸念があったためだ。廃炉作業などを進める人材の確保にも時間がかかったという。

 一方、東電の決定は地元自治体にとっても一つの区切りとなる。

 福島第二が立地する楢葉町の松本幸英町長は「町で生活する町民と避難先で生活する町民にとって、プラスのメッセージとなる」と歓迎。もう一つの地元・富岡町の宮本皓一町長も「(福島第二の廃炉作業による)雇用創出、地域経済への波及が復興への大きな追い風になると考えている」と期待を述べた。

 福島第二にある約1万本の使用済み燃料は、敷地内に新たに設けられる貯蔵施設で保管される予定だ。こうした施設には、立地自治体に対し政府からの交付金があり、地域振興などに充てられる。政府と自治体は今後、交付金の額などについて協議するとみられる。

 

 費用負担

 東電には今後、多くの課題が待ち受ける。

 福島第一の敷地内にはタンクに大量の処理水が貯蔵されており、政府は海洋放出を模索するが、地元の反発は強い。

 また、東電は事故に伴い、廃炉や除染などで約16兆円の費用を負担しなければならない。費用捻出のためには、今後30年間で毎年5000億円を確保する必要があるが、収益改善の大きな柱となる柏崎刈羽原発(新潟県)の再稼働は依然、見通しが立っていない。

 地元自治体から求められている1~5号機の廃炉計画の提出が遅れているなどで、再稼働に必要な地元自治体の同意を得られていないからだ。経営再建に向けた道のりは険しさを増している。

 

完了まで30~40年

 

 2011年3月の福島第一原発の事故後、国内の商業原発では廃炉決定が相次いだ。これまで事故前に決めた3基を含め20基が廃炉を決めており、福島第二原発が加わると、国内原発の半数近くの計24基になる。原発の寿命が原則40年になり、古い原発に新規制基準に沿った安全対策を行っても、コストに見合うだけの運転期間が期待できないからだ。

 一方、原子力規制委員会が13年7月に始めた安全審査に合格し、再稼働に至った原発は関西、四国、九州の3電力9基のみ。さらに、新たに設置が義務化されたテロ対策施設について、3社とも期限までに完成させる見通しが立たず、来春以降、九州電力川内原発1号機(鹿児島県)などが停止に追い込まれる見込みだ。

 原発の安定した稼働が見込めず、電力会社は厳しい経営を迫られるが、廃炉作業は着実に進める必要がある。

 通常の計画的な廃炉は30~40年かかる。先行して廃炉が進む中部電力浜岡原発1、2号機(静岡県)の場合、09年度から28年かけて廃炉を進めている。使用済み燃料を取り出した後、原子炉停止の際に使う制御棒の駆動機構など周辺設備を撤去し、原子炉本体や原子炉建屋の解体に進む。

 福島第二でも同様の工程で廃炉作業が進められる。東電は24日、原子炉1基あたりに30年程度、計4基で40年を超える期間がかかる見通しを発表した。

 ただ、福島第二はほかの原発と異なり、処理した汚染水をためるタンクなど福島第一のための廃炉用資機材の製造といった後方支援の役割も担う。福島第二の廃炉作業は、炉心溶融(メルトダウン)した福島第一の廃炉と同時進行で作業を進めなければならない。高木直行・東京都市大教授(原子炉物理)は「きめ細やかな工程管理を行うことが求められる」と話す。 (科学部 井上亜希子)