公明党に勝負を挑んだ学会員 れいわ公認で沖縄県出身の野原善正さん 「沖縄の痛み」都民に訴え、落選も21万票獲得
2019年07月23日 琉球新報
【東京】「れいわ新選組」公認で東京選挙区(改選数6)に立候補した沖縄県出身の野原善正さん(59)は21日投開票の参院選で、21万4438票を集めたが、20人の候補の中8位となり当選はかなわなかった。公明党の支持母体・創価学会の現役会員であることを前面に出し、選挙期間中は「いつまで沖縄に基地を押しつけるのか」と訴え、都民に自分事として考えるよう問い続けた。落選を受けて開いた会見では、「れいわ新選組」代表の山本太郎さん(44)が次期衆院選に向けたて意欲を示す中、野原さんも出馬する意向を明言した。
「のはらっ、のはらっ、のはらっ」
投開票日前日の20日午後7時すぎ、東京・新宿駅西口の小田急百貨店前には、野原コールが響き渡った。選挙期間中最後のマイクを使った「れいわ新選組」の街頭演説会「#新宿センキョ」には、百貨店前の路上から歩道橋上まで人があふれ、熱気に包まれた。その中で野原さんは、辺野古に反対する沖縄の民意を示しながら「自公政権は沖縄の民意を絶対に聞こうとしない。おかしな話だ」と政権を批判した。
◆沖縄ではなく東京選挙区立から立候補
野原さんは沖縄創価学会壮年部に所属するが、昨年9月の沖縄県知事選では自民党や公明党が支持した候補ではなく、辺野古新基地建設に反対を掲げ当選した玉城デニー氏を応援した。
そんな野原さんに山本代表は当初、「比例区での立候補をお願いしたい」と声を掛けした。公示直前の7月2日に出馬発表の会見があり、翌3日になって「選挙区で」と山本さんから言われた。山本さんも「最初は『比例で』という話だったが、『選挙区で』と相談して、直接選挙という舞台に持って行くということと合致して、かなった」と説明する。
準備も調わないままに迎えた公示の4日午前。届け出を済ませた新宿駅西口でマイクを握った野原さんはこう切り出した。「なぜ沖縄出身の私が東京選挙区から立候補したか」
その答えとなる沖縄への米軍基地集中の実態を訴えながら「日米安保条約のプラス面を肯定される方々は、そのマイナス面を一手に引き受けている沖縄の現状をもっと真剣に考えてもらいたい。いつまで他人の不幸の上に自分の幸せを築くつもりでしょうか」と語気を強めた。さらに「東京都の皆さん、全国の皆さん、どうぞ沖縄の痛みを、他人の痛みとしてではなく、自分の痛みとして真剣に考えてくれるよう切に希望する」と聴衆に呼び掛けた。
◆対公明党
東京選挙区には公明党代表で現職の山口那津男さん(67)も立候補していたが、野原さんは「なっちゃんとガチンコ勝負いたします」とひるむ様子もなく挑んだ。
辺野古新基地建設の容認も含め、安保法や共謀罪にも賛成した公明党に対する危機感がそこにはあった。「自民党の歯止め役になるはずだった公明党は今や自民党と一緒になって暴走している。絶対に止めないといけない」と公明党と創価学会の在り方について問題を提起した。
選挙期間中の14日には東京・信濃町にある創価学会総本部前でもマイクを握った。「公明党には、平和・福祉という立党の精神に返ってもらいたい。創価学会には、日蓮仏法の平和の精神に戻ってもらいたい」と繰り返し、学会員にも呼び掛けた。「良識ある学会員に問いたい。いつまで善人の沈黙を続けるつもりなのか。おかしいものはおかしい、間違っているものは間違っていると勇気を出して声を上げてほしい」
◆21万の重み
落選となったが21万票余の支持を獲得した。だが野原さんは「山本さんが前回取った66万の基礎票のようなものはあまり取れなかった。山口那津男さん(公明党代表)の票もそんなに切り崩せなかった」と総括した。
その上で「スタートも遅く、新人で東京に基盤もなく、ないないづくしで始めた選挙だった。悔しいのは悔しいが21万は実力不足だった」と選挙戦を振り返った。
野原さんが東京選挙区から立候補した意義について、山本さんは与党公明党と支持母体の創価学会を批判したことを挙げ「与党側を切り崩すのはなかなか難しく、どの党も手を付けない。これはれいわ新選組にしかできない。この先も非常に大きな部分だ」と強調した。
次期衆院選への対応を記者から問われた山本さんは「野原さんにまだ了解が取れていないが、やってくれますか」と隣席の野原さんに振ると「はい、喜んで」と応じた。
山本さんは「今回、21万を越える方々に野原さんの心意気を買ってもらえた。衆院選の東京ブロックとなると、1議席には30万ぐらいの票で獲得できるので(参院選より)ハードルが下がる。(衆院選出馬に)快諾をいただいたので次の闘いへと駒を進めていきたい」と語り、次期衆院選に照準を合わせた。