[解説]

 2019年4月15日から、東京電力は、福島第一原発3号機の使用済み核燃料プールからの核燃料集合体566体の取り出し作業を開始しました。今日からの作業では「⽐較的リスクの低い未使⽤燃料」、「未使⽤燃料7体を今⽉中にも構内の別の施設に運び⼊れる予定。」と報道されていました(上毛新聞 2019年4月11日「来週にも3号機燃料搬出、福島 第1原発」)。

来週にも3号機燃料搬出、福島 第1原発 上毛新聞 2019年4月11日

 4月15日8:50amに取り出し作業を開始しました(NHK NEWS WEB 2019年4月15日9:57「福島第一原発3号機 燃料プールから核燃料の取り出し開始」)。

福島第一原発3号機 燃料プールから核燃料の取り出し開始 NHK NEWS WEB 2019年4月15日9:57

 そして、同日14:14にNHKは、同日13時前に「2本目の核燃料を取り出したあと、なんらかのトラブルが起き、作業は一時中断」と報道しました(NHK NEWS WEB 2019年4月15日14:14「福島第⼀原発3号機 核燃料の取り出し作業を中断 トラブルか」)。

福島第一原発3号機 核燃料の取り出し作業を中断 トラブルか NHK NEWS WEB 2019年4月15日 14:14

 同日14:58のNHKは「午後1時前、2本目の核燃料を取り出したあと、作業を⼀時中断していましたが、まもなく安全が確認されたとして復旧」と報道しました(NHK NEWS WEB 2019年4月15日14:58「福島第⼀原発3号機 核燃料の取り出し作業再開」)。

福島第一原発3号機 核燃料の取り出し作業再開 東京電力 2019年4月15日14:58pm現在

 同日18:05のNHKのニュースでは、この作業中断のトラブルを報道しましたが、同日「7時のニュース」では作業中断については一切触れませんでした。多くの人々が見る時間帯に、あえて作業中断のトラブルを報道しないNHKの姿勢は極めて問題です。以下にその全文の記事を紹介します。しかし、同日7時のニュースはNHK NEWS WEBのどこを探しても見つかりません。都合が悪い、事実隠ぺいニュースは証拠に残さない、という姿勢なのでしょうか。

 一方、同日21:54からのテレビ朝日報道ステーションでは、きちんと「2体目を容器に入れる際、アームが引っかかって作業が一時中断する事態も起こっていたそうです。それでも予定していた4体の取り出し作業を完了しました」と報道しました。youtube動画 3’30あたり。以下をご覧ください。

youtube動画 【報ステ】福島第一原発3号機で核燃料取り出し(19/04/15)

 また、NHK福島放送局 はまなかあいずTodayは、2019年4月15日夕方のニュースで「2本目を容器に移して燃料取扱機を引き上げる際、核燃料の取っ手部分に引っかかったため角度の調整が行われ」作業が止まったことを報道しました。以下の開始1分くらいのところです。是非、ご覧ください。ただし、3日ほどでリンクは切れてしまいます。

「福島第一原発3号機 4年4ヵ月遅れ 燃料プールの核燃料 取り出し始まる」 2019年4月15日 NHK福島放送局 はまなかあいづToday

 NHKが2019年4月15日18:05pmに報道したニュース全文を紹介します。ちなみに、2019年4月16日8:30am現在、東京電力は4月15日13時前の核燃料取り出し作業中断について、プレスリリース、報道関係者一斉メールでも一切公表していません。東京電力の広報姿勢は大きな問題です。市民に廃炉作業の進行状況を逐一公表するべきです。

[NHKが3号機核燃料取り出し、一次中断を報道したニュース 全文]

福島第一原発3号機 核燃料取り出し きょうの作業終了

2019年4月15日 18時05分 NHK NEWS WEB

 東京電力福島第一原子力発電所3号機で、使用済み燃料プールに残された核燃料を取り出す作業が15日朝から始まりました。メルトダウンを起こした原子炉建屋から核燃料を取り出すのは初めてで、すべての作業を遠隔操作で行うことから、安全で着実に進められるかが課題です。

 福島第一原発3号機には事故で溶け落ちた燃料デブリのほかにも、使用済み燃料プールに強い放射線を出す使用済み核燃料が514体、未使用の燃料が52体の合わせて566体が残されています。

 作業はすべて遠隔操作で行われ、15日は、午前9時前から1体目の未使用の燃料を、プールの中で燃料取扱機と呼ばれる装置でつり上げる作業が始まりました。

 プールには水素爆発の影響で落ちたがれきがあることから、核燃料が引っ掛からないようゆっくりとつり上げられ、そのまま水中で10メートルほどの距離をおよそ1時間かけて移動し、運搬用の容器に収められました。

 午後1時前には、2体目の核燃料を容器に収めたあと、つり上げた装置が核燃料のハンドル部分に引っ掛かったということですが、東京電力はトラブルではないとしています。

 15日は、午後5時半までに予定の4体を容器に移し終え、作業は終了しました。
 燃料は合わせて7体を移し終えたあと、原発の敷地内にある専用のプールに運ばれます。

 メルトダウンを起こした原子炉建屋から核燃料を取り出すのは初めてで、すべての作業を遠隔操作で行うことから、安全で着実に進められるかが課題です。

 核燃料の取り出しに向けては、がれきの撤去や作業員の被ばくを防ぐ除染のほか、準備中の相次ぐトラブルで作業の開始が当初の計画より4年4か月遅れ、東京電力は来年度までに終えたいとしています。

取り出し開始 なぜ遅れたか

 福島第一原発3号機の使用済み燃料プールに残された核燃料の取り出しは、がれきの撤去や除染作業に時間がかかったことに加え、新たに設置した、燃料を取り出すための装置などに不具合が相次ぎ、当初の計画より大幅に遅れました。

福島第一原発3号機での核燃料の取り出しは、当初の計画では2014年の末に始めるとされていました。

 しかし、核燃料の取り出しに必要な設備や機器を設置するため、がれきの撤去やプールがあるフロアの除染をしましたが、放射線量が十分下がらず、放射線を遮る鉄の板を置く範囲を広げるなど作業員の被ばく対策に時間がかかりました。

 また、爆発で損傷した機器をクレーンで撤去する際、誤って機器をプール内に落下させ作業が中断したこともありました。さらに、遠隔操作で核燃料を取り出すための新たな装置と制御盤をつなぐ配線の一部が切れているのが見つかるなど装置や機器の不具合が相次ぎました。

 東京電力は、「設備や機器の性能の確認など品質管理にも問題があった」として、調達した製品の品質を確認する仕組みを構築していくことにしています。

4号機との違い

 福島第一原発の1号機から4号機の原子炉建屋には、事故の際、合わせて3108体の核燃料が燃料プールに保管されていました。

このうち4号機では、核燃料が1535体と最も多く、事故の2年後、平成25年11月に取り出しが始まり、1年余りかけて翌年、平成26年12月にすべての核燃料の取り出しを終えました。

 このときは、プールがあるフロアの放射線量がそれほど高くなかったため、通常の原発と同じように作業員がプールのそばまで近づいて作業を直接、監視しながら進めることができました。

 しかし、3号機では、放射線量は事故直後に比べれば大幅に下がっているものの、作業員が長時間、プールがあるフロアにとどまることができないため、作業は遠隔操作で行われます。

 通常の原発とは方法が異なるため、作業をいかに安全に着実に進められるかが課題です。

遠隔操作室での作業は

 福島第一原発3号機の使用済み燃料プールからの核燃料の取り出し作業は、原子炉建屋から500メートルほど離れた建物に設けられた専用の部屋から遠隔操作で行われています。

午前8時50分ごろ、作業員たちは、モニターに映ったプールの中の映像を見ながらレバーを操作し、燃料取扱機の先端部分で燃料集合体の取っ手をつかみました。そして、少しずつ引き上げ始めました。外観などに問題がないか確認しながらゆっくりと引き上げ、午前9時すぎ、核燃料をおさめていた燃料ラックと呼ばれるケースから1体目が抜けるのを確認していました。

燃料取り出しの方法は

 福島第一原発3号機の使用済み燃料プールから核燃料を取り出す作業は、作業員の被ばくをさけるため、すべてカメラの映像を確認しながら遠隔操作で行われます。その方法です。

まず、新たに開発された「燃料取扱機」と呼ばれる装置で撤去しきれていない小さながれきを取り除きながら、燃料集合体の取っ手をつかみ、キャスクと呼ばれる輸送容器に移します。

 核燃料が入った輸送容器は、やはり遠隔操作で大型クレーンを使いふたをしめ、除染をしたうえで地上まで下ろされます。そして、トラックでおよそ100メートル離れた共用プールと呼ばれる施設に運ばれます。

がれきや高放射線量が作業の支障

 福島第一原発3号機の使用済み燃料プールからの核燃料の取り出しに向けては、事故の際の水素爆発で落下したがれきや高い放射線量が作業の大きな支障となりました。

東京電力は、核燃料の取り出しに向け、作業の妨げとなるがれきの撤去と放射線量を下げるための除染を進めてきました。

 原子炉建屋の上部のフロアにあるおよそ10メートル四方の燃料プールには、大量のがれきが落下していて、なかには、重さ20トンもある「燃料交換機」と呼ばれる装置もありましたが、多くは取り除くことができました。

※ これは事実と違います。燃料交換機(FHM)は20トンではなく、35トンありました。NHKは事実をゆがめず、正しく報道すべきです。以下に資料。

 しかし、フロアの放射線量はなかなか下がりませんでした。事故直後、放射線量は最も高いところで1時間当たり2000ミリシーベルトを超えるところもありました。東京電力は放射性物質が付着した床の表面を削り取ったり、放射線を遮る鉄の板を置いたりする作業を進めてきました。

 その結果、放射線量は1時間当たり1ミリシーベルト以下まで下がり、短時間であれば作業ができるようになりました。
そして、燃料を取り出すための「燃料取扱機」と呼ばれる装置と大型クレーンを新たに設置。去年2月には、放射性物質の飛散や作業の妨げとなる風を防ぐドーム型の金属製カバーの設置が完了し、取り出しに向けた作業は最終段階を迎えました。

 しかし、去年3月に「燃料取扱機」の試運転を始めてから、装置や機器の不具合が相次ぎ、目標としていた去年11月の取り出し開始は断念します。対策をほどこし、2014年の末に始めるとされていた当初の計画より4年4か月遅れて、ようやく作業を始めることができました。

専門家「潜在的危険あり早期撤去を」

 原発の原子炉や核燃料に詳しい東京都市大学の高木直行教授は、使用済み燃料プールからの核燃料を取り出す作業のリスクについて、「使用済み燃料には大量の放射性物質があり、1時間当たり数百シーベルトほどと人が死に至る被ばくをするレベルだ。水の中にあれば問題はないが、潜在的には非常に危険だ」と指摘したうえで、「プールがある原子炉建屋は、地震や津波の影響で強度が落ちている可能性もあり、廃炉作業を進めていくうえでまずは燃料を撤去することが必要だ」と話しています。

また、すべての作業を遠隔操作で行うことについて、「現場では何が起きるかわからない。確認したいときに見たい角度から見られず、現場に近づけないことは作業を難しくする。すでに作業を終えた4号機に比べ難易度が高い」と指摘しています。

 そのうえで、高木教授は「プールに落ちたがれきが核燃料の間にはさまっていたりすると、引き上げたときに傷づけてしまって放射性物質が外に出るおそれがある。がれきを丁寧に取り除きながら1個1個、慎重に進めていく必要がある」と話しています。

[解説] 3号機使用済み核燃料プールに落下した、核燃料交換機(FHM)は20トンではなく、35トンです。以下、東京電力資料より。

<資料>3号機使用済燃料プール内大型ガレキ撤去作業の進捗状況について 東京電力 2015年3月26日 pp.10より

(参考)3号機使用済み核燃料プール内ガレキの撤去状況 東京電力 2015年3月26日公表

<追記>

 あと3体を取り出し、容器に入れたら、クレーンで容器ごと地上に降ろし、共用プールに運ぶという作業を今日4月16日から開始しているは
ずです。

 引き続き要警戒です。ちなみに万万が一、再臨界が起きた場合は大量にキセノン135が出ます。しかし、これは95%ベータ線を出して崩壊しますから、ガンマ線しか測らない線量計では反応しません。ガイガー管をお持ちの方は常にonに持ち歩きましょう。

 今朝2019年4月16日朝9時すぎに東京電力の広報担当に電話しました。
 「昨日の3号機使用済み核燃料プールからの核燃料取り出し一時中断では、一体何が起きていたのか?プレスリリース等見ても公表されていない。どこに公表しているのか?」と。

 1時間経ってから、広報から回答がありました。昨日、17:10~18:05 東京電力本社1階会見室での記者会見で記者からの質問に答えた。東京電力のHPの資料にはその内容は一切書いていない。」と。
 まったく、事態の重要性が東京電力は理解していません。今度は、こそっと被ばくさせるつもりでしょうか?
 川根は「今回の核燃料取り出しは、核燃料集合体同士がぶつかった場合など、核燃料の再臨界の危険があることを原子力規制委員会も認識している。だから、東京電力に対して絶対に再臨界しないように求めている。昨日のようなトラブルで一体何が起きているのか、市民は当然知る権利がある。毎日、3号機核燃料取り出しについて日報を出すべきだ。」と要求しました。

 東電は「3号機使用済み核燃料プールからの核燃料取り出しについて」の作業日報を作成し、公表するべきです。