内部被ばくについて、自主的に学習し、周りの方々に広めていくための会

独自基準「誰が責任」 朝日新聞 連載 見えない余震(中) 2011年09月23日

  • HOME »
  • 独自基準「誰が責任」 朝日新聞 連載 見えない余震(中) 2011年09月23日

朝日新聞 連載 見えない余震(中)

独自基準「誰が責任」

朝日新聞 asahi.com 2011年09月23日

  校庭で子どもが受けてもよい放射線量はいくらなのか。国の判断が揺れていた6月初め、県内で独自の除染基準を検討していた自治体があった。しかし、導入されることはなかった。

    ◇

 「何の根拠もなく決めると、数字が独り歩きして、数値が高い他の市町にも影響する。そうなったら責任取れるんですか」

 6月前半、那須烏山市の幹部は、電話の向こうの県職員に返す言葉を失った。

 文部科学省が示した年間20ミリシーベルトという暫定基準値に、内閣官房参与が抗議して辞任。国は同1ミリシーベルト(毎時3・8マイクロシーベルト)を「目標」に定めるなど二転三転していた。県北地域でも校庭の表土除去費用の国費負担を福島並みに求める声が高まっていた時期だった。

 那須烏山市でも独自計測を始めたが、毎時0・1マイクロシーベルト前後という数値は高いのか、低いのか。誰も判断できない。「国の基準で20年後の子どもに責任持てますか、と問われると、返す言葉がない。不安があるなら、取り除かなきゃ」

 千葉県野田市を参考に、毎時0・19マイクロシーベルト以上ならば独自予算で除染する方針で市長も了解した。県にも了承を得ようとかけた電話で、予想外の反応に直面したのだった。

 この幹部は、独自基準の導入を見送ったのは、あくまで市の自主的な判断と強調する。「現状は、毎時1マイクロシーベルトが問題のない数字じゃなかろうか」。国より低い基準は支出も伴う。「よその市町から怒られちまう。目立つことすっと、嫌われんだよな」

    ◇

 小山市教委は先月30日、毎時0・31マイクロシーベルトを超えた場合、学校の屋外活動を制限するという独自の基準を設定した。

 その4日前、国は福島県に対し、毎時1マイクロシーベルトを屋外活動の目安とするよう通知し、栃木県教委を通じて県内の市町教委にも送った。1日の学校滞在時間を6時間半、うち屋外活動を2時間として算出するとしている。

 「これから運動会の練習で屋外活動が増える。2時間は短すぎる」。小山市教委は、埼玉県川口市にならい、屋外滞在を8時間として計算した。「何もしないと、自治体が無責任と批判されかねない」。小山市教委の神長和博総務課長は話す。

 一方、県教委は敏感に反応した。小山市教委の決定を伝えた翌日付の新聞報道で「県教委によると(中略)具体的な基準設定は自治体に任されている」と書いた記事について、「そのような回答はしていない」と市町教委に連絡した。

 健康福利課の担当者は「独自基準を作らなければいけないと誤読されるのを防ぎたかった」と説明するが、こうも述べた。「独自基準を設定できる知見を、県も市町も持ち合わせていない。一体誰が責任を取れるのか。絶対安全とは言いきれないかもしれないが、国の目安を唯一のよりどころとせざるを得ない」

 校庭での屋外活動に独自基準を設ける自治体は、各地で相次いでいる=表。県内で、小山市以外に動きは少ない。

 

 

Copyright © 内部被ばくを考える市民研究会 All Rights Reserved.
Powerd by WordPress & BizVektor Theme by Vektor,Inc. technology.