東電は、2018年5月28日から福島第一2号機建屋の壁に7m×5mの穴を開けています。使用済み核燃料プールから核燃料を取り出すための部屋を作るためだとしています。この重要な廃炉作業を、読売新聞、毎日新聞、東京新聞は報道していません。朝日新聞は福島県の中央と会津版だけ記事を掲載しました(2)。NHKだけが全国放送しました(1)。

 実はこの壁穴開け、2018年4月16日から取り出し部屋設置のための削孔(壁に丸い穴を開ける)作業が行われていました。この削孔作業で、周囲や敷地境界の空間線量やダストモニタに有意な変動はありませんでした、と東京電力は言っています(3)。

 しかし、2018年4月16日、2号機建屋の西側の壁に穴を開けた日、午後14時と夜中24時前に数度、東京電力自らが定めた高警報レベルのダストが観測されています。また、削孔の近くの線量は作業前1mSv/時→作業後3mSv/時にもなっています。マイクロシーベルト/時という単位ではなく、その1000倍の大きさのミリシーベルト/時という単位です。大量の放射能が2018年4月16日以降、一気に吹き出たと考えられます(4)。

 今週2018年5月28日からの作業開始以降、3日連続でダストの上昇が見られ、2日間お休み、また、6月2日、3日と夜中に大量に放射能のダストが観測されています。意図的、計画的にに建屋内の除染が行われている可能性があります。ダスト観測の点の並び方が特定に時間に集中しています。(5)

 2018年5月28日には2つのブロックを壊した、と東電の資料には書いてあります(6)。つまり、5月28日、29日、30日とブロックを2つずつ壊し、2日間作業をお休み、6月2日、3日とまたブロックを2つずつ壊したのではないでしょうか。東電は、放射能が撒き散らされている事実を事実として認め、公表するべきです。

 思い起こせば2013年8月、東電は3号機屋上のがれき撤去作業で、飛散防止剤を撒く際に何と規定の10倍以上の100倍に薄め、水のようなものを撒いただけでがれき撤去を行いました。その結果、南相馬市旧太田村などで10月に放射性セシウム合計 120ベクレル/kg、さらに150ベクレル/kg、12月には180ベクレル/kgの放射能汚染玄米を生む結果となりました。農林水産省は、お米そのものや稲穂に落ちた放射性物質を可視化する、イメージングプレート法でこの事実を明らかにしています。一方、原子力規制委員会はシュミレーションと計算結果だけで、農林水産省の調査をまったく無視し、この放射能汚染米の原因は、3号機屋上のがれき撤去ではない、農地に流れ込んだ放射能汚染水を稲が吸い上げたせいだ、としました。以下、2013年8月の3号機屋上がれき撤去に伴う、作業員の頭等での高警報(8/12 19Bq/cm2、8/19 13Bq/cm2)とともに、3号機がれき撤去が南相馬市のお米であることを解説しました。

<参考>福島県南相馬市旧太田村2013度産米 180ベクレル/kg 2013年12月20日 と 3号機屋上がれき撤去作業

 

(1) NHKが2018年5月28日に報道した内容が以下です。

[使用済み燃料取り出しへ 壁の穴開け開始 福島第一原発2号機]

NHK NEWS WEB 2018年5月28日 18時11分

 

廃炉作業が進む福島第一原子力発電所2号機の使用済み燃料プールに残された核燃料の取り出しに向け、東京電力は28日から、原子炉建屋の壁に幅5メートル、高さ7メートルの穴を開ける作業を始めました。

福島第一原発2号機の原子炉建屋の最上階にある使用済み燃料プールには今も615体の核燃料が保管されたままで、東京電力は、地震などによるリスクを下げるために、核燃料を原子炉建屋から別の場所に移すことにしています。

2号機は水素爆発を免れたものの建屋の中の放射線量は高く、東京電力は、ロボットを投入して線量を測定するなど内部の状況を詳しく調べることにしています。

今回は、厚さ20センチの建屋の壁に、燃料プールがあるフロアに通じる幅5メートル、高さ7メートルの穴を開けることにしていて、壁を29のブロックに分けて切れ目を入れ、機械で引っ張って取り外すことができるよう取っ手が付けられています。

28日から始まった作業では、建屋から離れた場所にある免震重要棟でオペレーターが映像を見ながら遠隔で機械を操作し、ブロックを引き抜き穴を開けていました。

作業は来月中旬まで続けられ、東京電力はその後、放射線量の調査を行ったあと、具体的な燃料の取り出し方法を検討し、2023年度をめどに取り出しを始める計画です。

東京電力福島第一廃炉推進カンパニー2号機建築グループマネージャーの野田浩志さんは「2号機の廃炉はスタート地点に立ったばかりだが、調査ができるようになり、大きな一歩が踏み出せた。周辺環境に影響を与えないよう取り組んでいきたい」と話していました。

使用済み燃料プールの状況

福島第一原発の1号機から3号機では今も核燃料が使用済み燃料プールに残されたままで、3号機でことし秋にも、1号機と2号機では2023年度をめどに、取り出しを始める計画です。

それぞれの原子炉建屋の最上階に設けられた燃料プールには、1号機に392体、2号機に615体、3号機に566体の核燃料があり、今も冷却が続けられています。

いずれも原子炉の核燃料がメルトダウンした影響で建屋の中の放射線量は高く、1号機と3号機では水素爆発の影響で散乱したがれきの撤去などが進められてきました。

3号機では、放射性物質の飛散や作業を妨げる風などを防ぐドーム型のカバーを建屋の屋根に取り付ける作業がことし2月までに終わり、遠隔操作の訓練などを行ってことし秋にもプールから核燃料を取り出す作業が行われる予定です。

1号機では今後、除染や燃料を取り出すクレーンを新たに設置する必要があり、2号機でも今あるクレーンが使えない可能性が高く、取り替えも含めて検討が必要です。

原子炉建屋の最上階にある核燃料を取り出す作業は、地震などによるリスクを下げるために重要な工程で、作業員の被ばくを抑えながらいかに安全に進められるかが課題になります。

(2)読売、毎日、東京は全国版でも、福島版でも記事として報道しませんでした。朝日新聞だけが、福島県限定。福島中央と福島会津版だけ報道しました。

 朝日新聞福島中会津版 2018年5月29日の記事が以下です。

(3)東京電力は、2018年4月16日の削孔作業について、作業中における放射性物質濃度を監視しているダストモニタや敷地境界に設置してあるモニタリングポストにおいて、有意な変動はありませんでした、と言っています(2018年4月18日)。

(4)しかし、2018年4月16日、東電福島第一原発敷地境界でのダストモニタは午後14時すぎと24時前に、東電自らが決めた高警報レベル 10ベクレル/m3を超えるダストが観測されています。これは2017年9月1日以来のことです。ちなみに、2017年は「高警報」に相当するダストモニタの観測値は、2017年4月7日、7月12日、8月2日、8月23日、9月1日の5回しかありませんでした(東電は1.0×10 7乗ベクレル/cm3を高警報相当としている。つまり、10ベクレル/m3)。

 つまり、2018年4月16日の2号機の壁に穴を開けた「高警報レベル」は7ヶ月ぶりの警報になります。「高警報」となるべきでしたが、東京電力は高警報を出しませんでした。

東京電力 2018年4月、5月、6月 報道関係各位一斉メール 2018年 を参照。

 しかし、現実には出ていました。

 同日、東京電力にも、原子力規制委員会にも川根は電話しましたが、なしのつぶてでした。東京新聞にもデータを送り、記事にする内容は揃えたはずですが、2018年6月3日現在も東京新聞こちら特報部からは、何の返事もありません(2018年6月3日現在)。

(5)2018年4月18日資料によれば、4月16日の削孔作業での近くの線量が作業前 1.00mSv/時→  作業前後 3.00mSv/時 になったと書かれています。どこの新聞にも書かれません。本当に放射能は出てないのですか?

 2018年5月28日東電は2号機建屋の壁を7m×5mに渡って、大きく開けました。放射能は大拡散しているはず。しかし、朝日、読売、毎日、東京は報道しない。朝日の福島版のみ。

 これはメディア・コントロールの実例です。

 「原因不明のだるさ」「我慢できない眠気」「止まらない鼻水」を訴える方がいます。あなたの頭痛、2018年4月16日または5月28日から起きていませんか?

<参考>東京電力 報道関係各位一斉メール 2018年

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上記には何も見るべき情報はない。「高警報」相当だった、2018年4月16日も、5月28日の評価もなし。当然、トリチウムやストロンチウ90の空気中濃度の測定もない。

(6)壁をこんなに開けた。朝日新聞の福島中央・会津版もこの写真は載せていません。

2号機壁を壊す前

2号機壁を壊した後(これはブロック1つ分。5月28日はこの大きさのブロックを2つ分を壊し穴を開けました。)

これで、放射能が大量に出ないわけがありません。

 

風に舞い散る、放射能。2018年5月28日から3日連続放出、2日間休み、そして6月2日、3日を放出再開。主に夜中。ダストモニタが特定の時間だけ計測することは自然現象ではありえない。つまり、意図的・計画的放出であると考えられます。昼間の作業中は、放射能の塵をダクトで吸ったり、散水して飛散防止対策を採っているのでしょうが、夜中に破壊したブロックを無人自動車とロボットを使って、高線量がれきを、保管場所に運んでいるのではないでしょうか。このときに、放射能が撒き散らされている可能性があります。

 夜間の呼吸で放射能を吸わないようにする対策が必要です。

 

 この2号機建屋の壁の穴開け作業は2018年6月中旬まで続きます。

 福島第一原発の廃炉が2020年とか2030年とか終わる、と思ったら大間違いです。場合によると100年経っても、核燃料デブリに手をつけらないかもしれません。原子力関係者は、本当のことを言うべきです。デブリは100年経っても取り出せない、と。唯一の選択肢は、福島第一石棺化だけ、だと。