2015年5月18日、福島県の第19回県民健康調査検討委員会が開かれ、福島の子どもの甲状腺がんが1巡目の検査で111人(良性腫瘍であった1人を除く)、2巡目の検査で15人と診断されたことが報告されました。合計126人の福島の子どもたちが甲状腺がんと診断されました。

 福島県小児甲状腺がんおよび疑い合計126人(2015年3月31日現在)

「福島原発事故後の日本を生きる」さん作成。更に川根が地名を書きくわえました。
【原典作成】福島原発事故後の日本を生きる
http://www.sting-wl.com/fukushima-children5.html
【編集】川根 眞也

 新聞各紙は126人の子どもが甲状腺がんに罹っていることをまったく報道していません。これまで、福島県立医大は、甲状腺がんの手術を終えた子どもだけを「甲状腺がん確定」とし、穿刺細胞診で甲状腺がんであると診断された子どもを「甲状腺がん疑い」としてきました。甲状腺の細胞を注射器で直接吸い取り、悪性か良性かを判断する穿刺細胞診は甲状腺がんか否かを確定する国際的に確立した診断方法であるにもかかわらず。

ベラルーシ ブレスト州内分泌学診療所にて 穿刺細胞診 1 超音波検査で結節の場所を確認

ベラルーシ ブレスト州内分泌学診療所にて 穿刺細胞診 2 結節の場所を確認しているエコー画像

ベラルーシ ブレスト州内分泌学診療所にて 穿刺細胞診 3 甲状腺の結節の細胞を注射器で吸い取る

ベラルーシ ブレスト州内分泌学診療所にて 穿刺細胞診 4 吸い取った細胞を顕微鏡で観察して、甲状腺がんかどうか診断

ベラルーシ ブレスト州内分泌学診療所にて 穿刺細胞診 5 甲状腺がんの1つ 乳頭がんの細胞(顕微鏡写真)

 甲状腺がんの手術を終えた子どもだけを「甲状腺がん確定」としたのは「甲状腺がん」が確定した人数を、手術後の時点に遅らせることで、数のあまりの多さに気付かれないようにするための姑息な手段だったのではないでしょうか?

 しかし、今回の第19回県民健康調査検討委員会からは、小児甲状腺がんの人数をはっきりと穿刺細胞診の人数として公表し、資料の一番最後に手術を終えて「確定」した子どもの人数を書く形に変えています。もう、甲状腺がんにかかった子どものあまりの多さを隠し切れなくなったからではないでしょうか?

 資料3-1 県民健康調査「甲状腺検査(先行検査)」結果概要【暫定版】 [PDFファイル/2.9MB]

        ↓

pp.5に「穿刺吸引細胞診」の結果が、pp.27に「悪性ないし悪性疑い者の手術症例」が掲載されています。

 資料3-2 県民健康調査「甲状腺検査(本格検査)」実施状況 [PDFファイル/2.12MB]

    ↓

pp.5に「穿刺吸引細胞診」の結果が、pp.17に「悪性ないし悪性疑い者の手術症例」が掲載されています。

 内部被ばくを考える市民研究会では、今後、福島県立医大の言う「甲状腺がん疑い」、「甲状腺がん確定」を区別せず、「甲状腺がん」とした診断された子どもたちとして表現していきたいと思います。

 第18回県民健康調査検討委員会(2015年2月12日開催)と、第19回県民健康調査検討委員会(2015年5月18日開催)の、先行検査(2011年度、2012年度、2013年度)と、本格検査(2014年度以降、2014年度~2015年3月31日現在)での福島の子どもたちの甲状腺がんの患者の人数は以下の通りです。

福島の子どもたちの小児甲状腺がん

第18回(2014年12月31日現在)      第19回(2015年3月31日現在) 

先行検査(2011、2012、2013年度)    先行検査(2011、2012、2013年度)

  109人(良性結節であった1名を除く)→  111名

本格検査(2014年4月1日~12月31日現在) 本格検査(2014年4月1日~2015年3月31日現在) 

   8人               →   15名 

合計 117名              →  126名

 先行検査ではいわき市が23名が24名に1名患者が増えました。会津若松市が6名が7名に1名患者が増えました。

 本格検査では7名患者が増えています。福島市が2名から6名に4名患者が増えました。伊達市が2名から3名に1名患者が増えました。南相馬市が0名であったものが1名に、二本松市が0名であったものが1名に、患者が増えています。

 2015年3月31日現在15名の子どもたちが本格検査(2014年4月1日~2015年3月31日)で小児甲状腺がんと診断されています。この子どもたちは先行検査(2011~2013年度)では、8名がA1判定でした。つまり、先行検査では結節ものう胞も認められなかったのです。8名は原発事故4年間の発症した、ということになります。また6名がA2判定でした。先行検査で結節が5.0mm以下またはのう胞が20.0mm以下だったのです。1回目の検査から2回目の約2年間の検査で結節またのう胞が大きくなり、穿刺細胞診で悪性であることがわかった、ということです。

 イタリアのアンドレア・コリマ医師は、論文「Thyroid Nodules in Pediatrics: Which Ones Can Be Left Alone, Which Ones Must be Investigated, When and How」の中で、「小児の甲状腺結節の頻度は成人より少ないが、悪性の割合は成人より高い。最近の統計では小児の甲状腺結節の25%が悪性であるとされている」と書いています。

資料『小児の甲状腺結節:経過観察でよいものと精査すべきものの判別、および、いつ、どのようにして実施すべきか Andrea Corrias, Alessandro Mussa

 先行検査では、2015年3月31日現在、実に2,278人の子どもたちが5.0mm以上の結節または20.0mm以上ののう胞があります。 本格検査では、2015年3月31日現在、実に1,043人の子どもたちが5.0mm以上の結節または20.0mm以上ののう胞があります。(先行検査の対象者と本格検査の対象者は重複します。)

 もし、アンドレア・コレア氏の論文が正しければ、500人を超える子どもたちが小児甲状腺がんに罹る危険性があります。福島県、日本政府は事実を低くみせる努力などするのではなく、本格的に内分泌専門の病院を福島県のみならず、全国各地に建設し、専門的な医師の育成を始めるべきです。

 また、高放射能汚染地帯である、福島市や郡山市、二本松市、伊達市などから住民を避難させるべきです。敷地が放射線管理区域にあたる、セシウム134、137など4万ベクレル/m2以上の学校はただちに閉鎖させるべきです。

 高放射能汚染地帯に住んだ期間が長いほど、小児甲状腺がんのリスクは高くなります。一刻の猶予のなりません。

 新聞各紙の報道です。ちなみに読売新聞がこの126人の福島の子どもたちの小児甲状腺がんの報道を一切しませんでした。事実を隠ぺいする犯罪的な新聞です。

 

 ベラルーシ・プロジェクト報告はこちらで。ベラルーシの甲状腺がんの診断と治療を調査のレポートです。廃村になった村の空間線量の写真も掲載されています。