「福島県ではガンは増えない」「108人の子どもたちの甲状腺がんは放射線の影響ではない」と、福島県立医大、放射線医学総合研究所、環境省、文部科学省、東大グループなどが大合唱しています。

原発事故早期帰還と生活再建のために 河田東海夫 20140410

 えっ、福島県民の内部被ばくで1ミリシーベルトを超えたのが26人だけ?最大は3ミリシーベルト?目を疑う、河田東海夫(NUMOフェロー)のスライドです。このスライドは、福島への住民帰還を阻害しているのが、「1mSvの呪縛」だとして、「除染で1mSvはただちに達成できない」「1mSvに固執するべきではない」と説いている資料です。

  政府事故調は、甲状腺等価線量 100ミリシーベルトに相当する、1万3000cpmをスクリーニング検査で出た福島県住民は901人いた、福島県が放射線医学総合研究所のアドバイスに従い引き上げた10万cpmを超えた福島県住民は102人いた、と政府事故調(中間報告 Ⅴ 福島第一原子力発電所における事故に対し主として発電所外でなされた事故対処)にあります。

 以下、全文を紹介します。福島県民、最大3ミリシーベルトはデマです。

 前双葉町町長 井戸川克隆氏からもご自身の被ばく体験を伺いました。2011年3月12日、東京第一原発1号機の爆発、井戸川克隆氏はそのがれきをかぶっています。彼は、同日夜、福島県立医大でホール・ボディー・カウンター(WBC)を受け、体内にヨウ素131が31万ベクレルあったことを確認しています。以下は、このヨウ素131の粒子口径が1.0マイクロメートルとしたとき、31万ベクレルは1000ミリシーベルトに相当する、という資料もあります。

井戸川克隆氏 体内にヨウ素131 31万ベクレル。内部被ばくは1シーベルトか?

政府事故調(中間報告)

 Ⅴ 福島第一原子力発電所における事故に対し主として発電所外でなされた事故対処 より 

 pp.304~306
 

4 被ばくへの対応

(5)住民の被ばくへの対応について

b 事故後のスクリーニングレベルの引上げ

 オフサイトセンターの現地対策本部は、3 月12 日からスクリーニングレベルの設定に係る検討を開始し、現地対策本部は、3 月13 日午前、ERC に対し、40Bq/㎠又は6,000cpmという基準値について意見照会した。ERC は、安全委員会にコメントを要請し、安全委員会は、6,000cpm を1 万cpm80に修正すべきことに加え、1 万cpm を超えた者には安定ヨウ素剤を投与すべきことを記したコメントをERC に送付した。しかし、このコメントは、ERC から現地対策本部には伝わらず、若干の字句の修正を除き、現地対策本部意見のままでよいとするコメントが伝えられることとなった81

 現地対策本部長は、13 日14 時20 分、原災法第15 条第3 項の規定に基づき、福島県、大熊町、双葉町、富岡町、浪江町、楢葉町、広野町、葛尾村、南相馬市、川内村及び田村市の各首長に対し、当面のスクリーニングレベルを40Bq/㎠又は6,000cpm とすることを指示した。福島県は、「福島県緊急被ばく医療活動マニュアル」でスクリーニングレベルとして事前に定められていた値でもあった40Bq/㎠の基準を採用することとし、40Bq/㎠は1万3,000cpmに相当するとして、1 万3,000cpmをスクリーニングレベルとし、スクリーニングを開始した。3 月13 日に緊急被ばく医療派遣チームとして福島県を訪れた放射線医学の専門家ら82は、スクリーニングを担当する福島県地域医療課から、スクリーニング方法に関するアドバイスを求められた。同専門家らは、検討の結果、断水が続いていて除染に必要な水が不足していたこと、夜間の気温は氷点下であり、特に病人等を屋外で除染するのは危険であったこと、少ない職員で迅速に対応する必要があったことなどから、通常の方法でスクリーニング及び全身除染を実施することは困難と判断し、「福島バージョン」のスクリーニング及び全身除染の検討を行い、福島県地域医療課に提言した。その提言の一つとして、スクリーニングレベルを、IAEA の「放射線緊急事態の初期対応者へのマニュアル」が一般住民の体表面汚染に対するスクリーニングレベルとして定めていた1μSv/h(体表面から

80 1 万cpm は、安全委員会が40Bq/㎠相当として安全側に判断して採用している値である。
81当委員会は、その原因についても調査したが、このコメントが安全委員会からERC にFAX 送信され、これを安全委員会事務局からERC に派遣されていた職員が受領したことまでは明らかとなったが、その後これを見た者がいないため、解明には至っていない。
82福井大学、広島大学及び放医研から派遣を受けた。

10cm 離れた場所での線量率)に相当する8310 万cpmに引き上げるとの提言を行った。福島県は、前記の現地対策本部長の指示があるにもかかわらず、この提言を受け入れ、14 日以降、全身除染のスクリーニングレベルを10 万cpm とすることを決定した。なお、福島県立医科大学では、3 月12 日から、病院を訪れる患者に対して独自にスクリーニングを行っていたが、やはり水の不足等の理由から10万cpmをスクリーニングレベルとする運用を既に行っており、この点も、福島県がスクリーニングレベルを10 万cpm に上げる際に考慮された。

 安全委員会は、14 日未明、ERC 医療班からの報告によって、福島県のスクリーニングレベル引上げの意向を知り、検討を行った結果、1 万3,000cpm が全て内部被ばくのヨウ素によるものとすると、安定ヨウ素剤投与の基準値となる等価線量100mSv に相当するとして84、同日4 時30 分、ERC に対し、「スクリーニングの基準値は、10 万cpm に上げず、現行のまま1 万3,000cpm に据え置いた方がよい。」との助言を行ったが、福島県は、なお10 万cpmを基準とする運用を続けた。

 その後、安全委員会は、スクリーニング作業を実施している現地の意見を踏まえ、再度検討を行い、19 日14 時40 分、ERC に対し、スクリーニング基準を10万cpmに引き上げる「緊急被ばく医療のスクリーニング基準について」という助言をした。

c スクリーニングの実施

 「緊急被ばく医療のあり方について」は、地方公共団体は、関係機関の協力を得て、必要に応じて救護を行う場所等を指定し、スクリーニングを行うとしている。これを受け、福島県緊急被ばく医療活動マニュアルは、県原子力現地災害対策本部に、県の保健福祉部健康衛生領域総括参事を班長とする医療班を設置し、県保健福祉事務所職員、中核市保健所職員、県立病院や医師会の医師、県放射線技師会等からなるスクリーニングチームを設けて、サーベイメータ等による体表面汚染検査、除染の必要性の判断等を行うことと規定している。

 福島県は、3 月11 日夜に政府から原子力緊急事態宣言が発されたのを受け、

83 TGS-136 型(アロカ社製)GMサーベイメータ(5cm 口径)を用いて計測した場合
84 この仮定は安全側に立っており、実際の汚染の多くは着衣等の外部にも生じる

クリーニングの実施を決定し、翌12 日、スクリーニングを開始した。しかし、対象者は想定以上の規模となり、県内の要員だけでは人手が足りなかったため、福島県は、国や自治体、大学、電事連等の支援を得て、避難所や常設会場でスクリーニングを実施し85、延べ人数で県内の人口の1 割を超える20 万人以上がスクリーニングを受けた。このうち、1 万3,000cpmから10 万cpmの線量が測定さ
れて部分的な拭き取り除染の対象になったのは901 人10 万cpm 以上の線量を
記録して全身除染の対象になったのは102 人であった。ただし、10 万cpmを超えた者は、主に脱衣等により基準値を下回った。

東京電力福島原子力発電所における事故調査・検証委員会 中間報告

Ⅴ 福島第一原子力発電所における事故に対し主として発電所外でなされた事故対処

1 環境放射線モニタリングに関する状況
 2 SPEEDI情報の活用及び公表に関する状況
 3 住民の避難
 4 被ばくへの対応

(5)住民の被ばくへの対応について

   b 事故後のスクリーニングレベルの引上げ → pp.304~306

 5 農畜水産物等や空気・土壌・水への汚染
 6 汚染水の発生・処理に関する状況
 7 放射性物質の総放出量の推定及びINES
 8 国民に対する情報提供に関して問題があり得るものの事実経緯
 9 国外への情報提供に関して問題があり得るものの事実経緯
 10諸外国及びIAEA等国際機関との連携