福島の野良牛の体内から銀110m(Ag-110m)が検出されています。この放射性核種の危険性を指摘する声がほとんどありません。しかし、核攻撃を想定した時の公衆の放射線防護の考え方について述べた、国際放射線防護委員会(ICRP)の文書Publication 96には、銀110mは100ベクレル/kg以上出てはならない、とされています。

 以下、『放射線攻撃時の被ばくに対する公衆の防護』ICRP Publication 96から、核攻撃が行われた場合に、日用品として飲食または使用する物品の放射性核種の規制濃度を紹介します。銀110mはセシウム134、セシウム137と同様に100ベクレル/kgが規制レベルです。

『放射線攻撃時の被ばくに対する公衆の防護』ICRP Publication 96

 ちなみに、福島県の野良牛47頭の肝臓には、177±176ベクレル/kgの銀110mがあったことを、東北大学加齢医学研究所の福本学教授らが研究発表しています。

Distribution of Artificial Radionuclides in Abandoned Cattle in the Evacuation Zone of the Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant;Tomokazu Fukuda et al.2013

大量物資中の放射性核種の放射線規制(5.6.3)
(160)日用品中の放射性核種に対する放射線規準の最近の国際的合意では、大量物資中の人口及び自然起源の放射性核種の放射能濃度の値を、除外、免除、及びクリアランスに係るBSSの要件を満たすガイダンスとして使用できるように定めている。表5.4にその値を示す。

         表5.4 大量物資中の放射性核種の放射線規制
放射性核種                                レベル(Bq/kg)
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I-129                                            10
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Na-22,Sc-46,Mn-54,Co-56,Co-60,Zn-65,Nb-94,Ru-106,            100
Ag-110m,Sb-125,Cs-134,Cs-137,Eu-152,Eu-154,Ta-182,
Bi-207,Th-229,U-232,Pu-238,Pu-239,Pu-240,Pu-242,
Pu-244,Am-241,Am-243,Cm-245,Cm-246,Cm-247,
Cm-248,Cf-249,Cf-251,Es-254

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C-24,Na-24,Cl-36,Sc-48,V-48,mn-52,Fe-59,Co-57,Co-58,            1000
Se-75,Br-82,Sr-85,Sr-90,Zr-95,Nb-95,Tc-96,Tc-99,Ru-103,
Ag-105,Cd-109,Sn-113,Sb-124,Te-123m,Te-132,Cs-136,
Ba-140,La-140,Ce-139,Eu-155,Tb-160,Hf-181,Os-185,
Ir-190,Tl-204,Bi-206,Th-232,U-233,U-235,U-238,Np-237,
Pu-236,Cm-243,Cm-244,Cf-248,Cf-250,Cf-252,Cf-254

以下、規制レベル 10,000Bq/kg 100,000Bq/kg 10,000,000Bq/kg と続くが省略した。
(注)原典では、規制レベルの単位がBq/gとなっていたが、編集者がBq/kgに直した。
【出典】放射線攻撃時の被ばくに対する公衆の防護 ICRP Publication 96 訳 社団法人 日本アイソトープ協会
https://ghca.jp/files/fm/512d98161p3hihjxevwg_0_20.pdf
【編集】川根 眞也