福島県が『県民健康案内 健康長寿県日本一をめざして』と題したパンフレットを、福島県立医大によって作って、配布しています。福島県医師会、福島県病院協会も協力しています。

福島県 県民健康案内 健康長寿県日本一をめざして 福島県立医大 パンフ

 この題名もそうですが、あたかもこれぐらいの放射能は安全です、としか書かれてないパンフレットを作り、福島の人びとに配布することに何の意味があるのか?疑問です。

 このパンレットの根本的な欠陥は、チェルノブイリ原発事故で被害を受けた、ベラルーシ、ウクライナ、ロシアで何が起こったかに一切触れていないところです。放射線医学総合研究のサイトや消費者庁が発行しているパンフ『食品と放射能Q&A』もそうです。同じ間違いをしています。

消費者庁 食品と放射能Q&A 20110607

 チェルノブイリ事故後、ベラルーシでは、もっとも奇形児の出産が多かったのは、事故後4年や5年後ではなく、事故から15年後あたりであったと言われています。チェルノブイリ事故後、将来の深刻な被害が予想されなかったため、10代やそれ以下の子どもたちは放射能汚染された食品を知らずに食べ続けて成長しました。その子どもたちが15年後、結婚と出産の時期を迎え、まず、妊娠できない、流産してしまうことが多くなり、また、産まれた赤ちゃんの奇形率が急上昇しました。現在でもゴメリ州などの汚染地帯では女性はなかなか妊娠することができず、妊娠できるのは10人に2人と言われています。

 福島県の福島第一原発事故警戒区域内で飼育されつづけている牛の胎児のセシウム137濃度は、母牛の体内のセシウム137の濃度と同じである(母牛の1.19倍)ことが報告されています。また、産まれた子牛のセシウム137濃度は母牛の母乳を飲むために、母牛のセシウム137の濃度よりも高くなり、1.36倍の濃度になることが報告されています。(牛の生体内放射能汚染分布 東北大学大学院 農学研究科 磯貝 恵美子教授の発表 公開シンポジウム『福島原発警戒区域内に残された牛と農家』 – 家畜と農地の管理研究会の活動を通して - 2013年9月14日)

 人間にも同じことが言えるのではないでしょうか?母親が高濃度にセシウム137を体内に蓄積している場合、それは胎児、そして母乳を通じて乳児に移行する可能性があります。

 福島県立医大、放射線医学総合研究所、消費者庁など、ベクレルからシーベルトへの換算とか、発ガンリスクの説明の前に、放射性物質を継続的に施主した住民とその子どもたちがどんな健康被害にあったのか?チェルノブイリの27年目の真実こそ、パンフレットに書くべきです。

 確かに現在ではセシウム134、137合計100ベクレル/kgを超える食品は市場に流通していないかもしれません。しかし、福島県、宮城県、岩手県、山形県など山菜やきのこ、自家製野菜は何の制限もなく食べられています。2000、3000ベクレル/kg程度のきのこを食べている福島県などの住民がいるのではないでしょうか?

 ベラルーシでは立ち入り禁止の森があり、チェルノブイリ原発事故から27年経った現在でもそこではベリー類、きのこは採取禁止です。(ベラルーシ・プロジェクト報告 p.13)日本ではそうした措置はまったく取られていません。本来は、そうした放射性物質の高濃度に汚染されたきのこや果実、山菜の摂取がどれだけ人体に破滅的な健康被害をもたらすのかを明すべき機関は、本来、福島県立医大や放射線医学総合研究所、消費者庁のはずです。そ福島県立医大や放射線医学総合研究所、消費者庁が自然放射能カリウム40をセシウム137と同列に扱うなど住民の放射線防護にまったく役に立っていません。ただただ税金の無駄遣いとしか言いようがありません。

 福島県はまったく福島県民の放射線防護に役立たない、県民健康管理のためのパンフ『健康長寿県日本一をめざして』を回収、処分すべきです。