2018年7月31日、原子力委員会が発表した指針は、① これからもプルトニウムを保有する、② そのために使用済み核燃料からの再処理でプルトニウムを 抽出する。③ MOX燃料を利用する原発を活用する、という内容です。

 その新指針を新聞各紙はどう報道したのでしょうか。特に毎日新聞と読売新聞は本当に死んでいます。見出しに「原子力委 プルトニウム削減明記 新指針 六ケ所再処理量運転制限」毎日新聞、「プルトニウム削減明記…原子力委 基本方針15年ぶり改定」読売新聞、です。しかし、そもそも、各新聞に記事の情報を提供している、共同通信もだめです。共同通信の記事の見出しは「核燃料再処理制限し増加を抑制 プルトニウム削減の新指針」です。共同通信の配信をそのまま引用している、地方も同じ記事の見出しです。共同通信が「プルトニウム削減」と書けば、無批判にプルトニウムを削減するのだろう、という新聞社の無能ぶりが現れています。

 今回の原子力委員会の指針は、プルトニウム削減の方針ではないです。今後も日本としてプルトニウムを保有し、そのプルトニウムを抽出、保有するために、MOX燃料を利用する原発を稼動し続ける、という内容です。

 

プルトニウム削減で新指針具体的方法・数値示さず

東京新聞 2018年8月1日1面

 国の原子力政策を決定する原子力委員会(委員長=岡芳明・元早大理工学部特任教授)は7月31日、原発の使用済み核燃料から発生するプルトニウムの利用指針を15年ぶりに改定し、公表した。現在の保有量約47トンを上限と設定し、これより削減させるとした。ただし具体的な削減の方法や数値目標には言及せず、電力会社に委ねた形で、実際に削減が進むかは見通せない。

 岡委員長は具体策に踏み込まなかった理由について「民間の経営、創意工夫をできるだけ生かすため」と説明した。

 プルトニウムを大量消費する高速炉開発が滞る中、保有量削減には既存の原発で少しずつ消費するプルサーマル方式の実行しか手段がないのが現状。新指針では毎年の抽出量を政府の認可事項とし、プルサーマルで消費できる量に限定するとした。プルトニウムを抽出する再処理工場(青森県六ヶ所村)については現計画通り2021年上記に完成しても、フル稼働するとプルトニウムが増えるおそれがあるため、「稼動を抑えることもある」(原子力委事務局)としている。

 また、「電力会社間の連携を促す」とも明記。プルサーマル原発の再稼動のめどが立っていない東京電力などのプルトニウムを、プルサーマル原発が再稼動している関西電力などで消費させることも想定した。

 日本は原発の使用済み核燃料からプルトニウムを取り出し再利用する核燃料サイクルを進めようとしているが、プルトニウムを使う高速増殖原型疎炉もんじゅは2016年に廃炉が決定。原爆6000発に相当するプルトニウムを抱えていることに米中など海外からの警戒感が示されている。

再処理容認 矛盾の政策

  原子力委員会の新指針はプルトニウム削減を主張する一方、増加につながる再処理工場稼動を認める矛盾に満ちた内容となった。

 再処理工場を運営する日本原燃によるとフル稼働する2025年には年間8トンのプルトニウムを生産する。一方、プルサーマル原発は1基0.5トンしか消費しないため、4基の消費分は計2トン。この結果、毎年6トンずつ増える計算。このため、同委は再処理工場の稼動を落とすことが必要と指摘する。

 だが、再処理工場の建設・運営費は電気代に託送料などで上乗せ徴収される仕組みとなっており、稼動が落ちて赤字が膨らめば、さらに電気代で国民負担が増えかねない。高速炉の後継機も共同開発する予定の仏が計画を縮小、実現のメドは立たない。市民団体・原子力資料情報室の松久保肇氏は「もはや核燃料サイクルが経済的に成り立たないのは明白。撤退が筋だ」と指摘している。(伊藤弘喜)

 

プルトニウム上限47トン 現有分、削減には課題 原子力委

朝日新聞 2018年8月1日朝刊 1面

写真・図版

プルトニウムの「収支バランス」

 内閣府原子力委員会は31日、日本が国内外に保有するプルトニウムについて、現在の約47トンを上限とし、削減につなげる新たな方針を決定した。使用済み核燃料の再処理は、原発の燃料として再利用する分に限って認める。建設中の六ケ所再処理工場青森県)は、稼働が制限される可能性があり、政府が掲げてきた核燃料サイクル政策は形骸化が強まりそうだ。▼3面=進まぬ再利用

 方針の改定は15年ぶり。原子力委員会は、2003年の方針で「利用目的のないプルトニウムを持たない」として核兵器の原料になるプルトニウム保有に理解を求めてきた。これに対し、新方針は初めて保有量の削減に踏み込んだうえで、「現在の水準を超えることはない」とした。

 日本はプルトニウムを国内に約10・5トン、再処理を委託した英仏に約36・7トン持つ。原爆約6千発分に相当する量で、今年7月に日米原子力協定が30年の満期を迎えるにあたり、米国などから具体的な削減策を示すよう求められていた。

 新方針は、五つの対策を示した。ふつうの原発で再利用するプルサーマル発電に必要な分だけ再処理を認める▽再処理工場が「適切」に稼働できる水準まで減らす▽電力会社の連携で海外保有分を減らす▽利用方針が明確でない研究用プルトニウムの処分を検討▽使用済み燃料の貯蔵容量を増やす、などを盛り込んだ。

 また、電力会社などに対し、余剰分の具体的な利用計画を毎年公表することも求めている。

 日本は、プルトニウムを使う高速増殖原型炉もんじゅ福井県)の廃炉が決まり、プルサーマルも計画通り進んでいない。一方、3年後に完成する予定の再処理工場がフル稼働すれば、年間約7トンのプルトニウムが取り出される。

 電気事業連合会は原発16~18基でプルサーマルを導入すれば、再処理工場がフル稼働しても保有量を減らせると試算する。だが、現在導入できたのは4基で、原子力委によると、現状のままなら、再処理工場の処理能力の4分の1程度しか稼働できなくなるという。

 (小川裕介、川田俊男)

再処理工場、稼働に制限も 進まないプルトニウムの再利用

朝日新聞 2018年8月1日朝刊 3面

 写真・図版日本が保有するプルトニウム

  • 写真・図版

 内閣府の原子力委員会は、たまり続けるプルトニウムの保有量に上限を設け、現状の約47トンから削減する方針にかじを切った。核拡散への懸念を払拭(ふっしょく)する狙いだが、実際に減らしていけるかは、関係省庁や電力会社の取り組みに委ねられる。▼1面参照

 ■プルサーマル、再稼働は4基

 「かなり大きな一歩」。原子力委員会の岡芳明委員長は31日の記者会見で、新方針の意義をこう強調した。

 新たな方針は、日本原燃の六ケ所再処理工場(青森県)の稼働をコントロールすることが柱になる。

 日本原燃の計画では、工場は約3年後に完成し、使用済み燃料からプルトニウムを取り出す再処理が本格的に始まる。新方針のもとでは稼働が大幅に制限される可能性がある。経済産業省による認可で、必要な分だけ再処理を認める仕組みにするが、プルトニウムの再利用そのものが停滞しているからだ。

 プルトニウムとウランを混ぜた「MOX燃料」をふつうの原発で使うプルサーマル発電は、電気事業連合会の計画通りに16~18基で導入できれば、年に8~10トンを消費できる。一方、工場がフル稼働すると、新たに分離されるプルトニウムは年に約7トンで、収支のバランスが取れる。

 ただ、東京電力福島第一原発事故後、プルサーマルで再稼働した原発は4基のみ。通常の再稼働とは別の許可を受ける必要があり、今後も大きく増える見通しはない。

 保有量の8割近くを占める海外分は、六ケ所の工場が着工する前から、英仏の施設に再処理を委託した分だ。新方針は、電力各社で融通し合うことで海外分も減らすよう促す。再稼働が進む関西電力などの原発で、東京電力など他社分を燃やすことを想定する。

 電気事業連合会の勝野哲会長(中部電力社長)は7月20日、「電力間の融通を検討していない。各社でプルサーマルを含めた再稼働をやっていくのが大前提」と消極的な姿勢を示した。再稼働が進む電力会社にとっては「地元との信頼関係を崩しかねない」(電力業界関係者)からだ。

 新方針は、日本原子力研究開発機構の施設などに約4・6トンある研究開発用について、捨てる選択肢も検討すると踏み込んだ。使い道がほとんどなく、核テロ防止などの観点から削減を求められていた。ただ、具体的な処分法は決まっておらず、処分地を見つけるのも難航が予想される。

 (川田俊男、桜井林太郎)

 ■英、有償で引き取りを提案

 プルトニウムの削減には、プルサーマル以外の選択肢もある。

 日本が英国で保有するプルトニウムについて、英国政府は日本側が「十分にお金を払う」ことを条件に引き取ることを提案する。だが、電力会社は否定的だ。政府関係者も「あくまでプルサーマルで燃やす」と言う。プルトニウムを「資源」として再利用する核燃料サイクルの前提が崩れてしまうからだ。

 英国にある約21トンは、現状では日本に持ち帰るのが難しい事情もある。英国のMOX燃料工場は2011年に閉鎖され、燃料に加工できない。加工前のプルトニウムを日本に輸送すれば、核拡散への懸念から国際問題に発展しかねない。このまま「塩漬け」になれば多額の保管料を払い続けることになる。

 一方、欧州では、英国に余剰分を引き取ってもらう動きが広がる。ドイツやスウェーデン、オランダで実績がある。英国にとっては、自国分と一緒に処分でき、必要な資金も確保できる。

 再処理をやめた米国も、解体した核兵器から出たプルトニウムの処分に悩む。MOX燃料にして原発で使おうとしたが、予算超過などで断念。代わりにプルトニウムを少量ずつ分け、化学物質を混ぜて薄め、地層処分する「希釈処分」を検討する。

 (小川裕介、香取啓介=ワシントン)

 ■<視点>核燃料サイクル、幕引きを

 原子力委員会がプルトニウム保有量の上限を「現在の水準」(約47トン)と明示したことは、日本の核燃料サイクル政策がいよいよ立ち行かなくなった現実を示すものだ。

 新方針によって、2・9兆円を投じて建設中の六ケ所再処理工場(青森県)は本格稼働を待たず、運転計画が暗礁に乗り上げる可能性が出てきた。

 それでも政府は、原発のすべての使用済み核燃料に再処理を義務づける「全量再処理」路線を堅持する。大量の使用済み核燃料が、いつ再処理できるのかわからず、国内で長期保管を強いられるのは必至だ。

 核燃料サイクルはそもそも、核兵器材料のプルトニウムを民間市場に流通させることで成り立つ。核拡散のリスクを本質的にはらんでおり、削減に手間取れば当然、国際社会からの批判にさらされる。

 しかし、今回の新方針も肝心の具体的な削減目標や手段、時期などには踏み込まなかった。政府は削減に向けた詳細な道筋を、早急に世界に示す必要がある。

 一方、新方針は研究開発用のプルトニウムについては、「処分」も含めて検討するとした。政府が真剣に削減を目指すのなら、「資源」と位置づけてきた電力会社の保有分にもこの方針を広げ、「ごみ」として廃棄処分する研究にも、すみやかに着手すべきだ。

 核燃料サイクルが目指したプルトニウム利用はすでに経済性を失い、欧米では実際、廃棄処分への取り組みが進む。損失が拡大する前に、いかにプルトニウム利用から手を引くかが、世界の潮流だ。日本も、核燃料サイクルの幕引きにとりかかるときである。

 (編集委員・上田俊英)

 

原子力委 プルトニウム削減明記 新指針 六ケ所再処理量運転制限

毎日新聞 2018年8月1日 1面

 内閣府原子力委員会は31日、プルトニウムの利用指針を15年ぶりに改定し、日本の保有量を減少させると初めて明記した。新指針では、建設中の再処理工場(青森県六ケ所村)でのプルトニウム製造を原発で使う分までしか認めず、運転を制限する。電力会社には連携して利用可能な原発で消費し、着実な削減につなげるよう求めた。核不拡散の観点から米国を含む国際社会が日本の保有状況を懸念しており、払拭(ふっしょく)に努める。

 原子力委員会は日本の原子力政策の長期的な方向性を示す役割を持っており、国際原子力機関(IAEA)を通じて新指針を各国に周知する。7月に閣議決定したエネルギー基本計画でも削減を明記している。

 プルトニウムは原発の使用済み核燃料の再処理で生じ、日本は非核国では最多の核兵器約6000発分、47・3トンを保有。電力会社などが国内外で保管する。

 原子力委員会は2003年の旧指針で「利用目的のないプルトニウムを持たない」と定めた。新指針は初めて削減に踏み込んだが、時期や削減量は定めず、保有量の上限は「現在の水準は超えない」とした。

 その達成に向け、21年完成予定の再処理工場の運転計画を国が認可する際、ウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)燃料として原発で使う「プルサーマル発電」に必要な分までに稼働を制限。さらに電力会社に、これまで再処理を委託し英仏で保管する36・7トンについて連携、協力して削減するよう要請した。政府は、プルサーマル発電が可能な原発で会社の枠を超えて使ってもらい、全体の削減につなげたい考え。電力会社には毎年、プルトニウム利用計画の公表を求めた。

 日本はプルトニウムの利用目的に発電用資源として再利用する核燃料サイクルを掲げ、当面はプルサーマル発電で用いるとしている。しかし福島第1原発事故の後、同発電の原発の再稼働は計4基にとどまり、消費は進まない。再処理工場がフル稼働すれば毎年、保有量は最大約8トン増える。その全ての消費には原発16~18基が必要とされ、現状では再処理工場の稼働の大幅制限が避けられない情勢だ。【岡田英】

 

プルトニウム削減明記…原子力委 基本方針15年ぶり改定

読売新聞 2018年8月1日朝刊 2面

プルトニウム利用の基本方針を改定した原子力委員会(31日、東京都千代田区で)

 内閣府原子力委員会(岡芳明委員長)は31日、プルトニウムの利用に関する基本方針を15年ぶりに改定した。日本のプルトニウム保有量について「減少させる」と明記した。核不拡散を目指す国際社会からの懸念を背景に、平和利用の透明性を高めるという。

国、各電力間融通を提案

 2017年末時点の日本のプルトニウム保有量も公表した。英仏が保管している約36・7トンと国内保管分約10・5トンの計約47・3トンで、16年末より0・4トン増えた。長崎型原爆約6000発分に相当する。

 03年の前回方針も「利用目的のないプルトニウムを持たない」との原則を盛り込んでいたが、保有量の削減は示していなかった。

 今回の方針では、英仏が保管する分のプルトニウムの優先的な削減を打ち出した。具体的には、原発の再稼働が遅れている電力会社が持つプルトニウムを、既に再稼働した他電力の原発で消費するなど、電力会社間の連携を促した。

 一方、使用済み核燃料からプルトニウムを取り出す日本原燃の再処理工場(青森県六ヶ所村)は、21年度に完成する予定。フル稼働すれば年間最大7トンのプルトニウムが増える。このため今回は、政府として、必要最小限の再処理しか認めない方針も新たに示した。

 日本のプルトニウム保有量は、03年に40トンを超えた。09~11年や16年ごろには、プルトニウムとウランの混合酸化物燃料(MOX燃料)を使うプルサーマル発電で保有量が少し減ったものの、ここ10年ほどの間は45トン前後で推移している。

原発稼働遅れ 消費が進まず

 消費が進まない最大の理由は、11年の東京電力福島第一原子力発電所の事故後の原発再稼働の遅れだ。MOX燃料を使える原発は現在、関西電力高浜3、4号機(福井県)と四国電力伊方3号機(愛媛県)、九州電力玄海3号機(佐賀県)の4基だけ。

 このうち伊方3号機は、運転差し止めの仮処分決定で停止している。3基のプルトニウム消費量は、年間計1トン程度にとどまる。年間0・5トンの消費が期待されていた高速増殖炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)は、16年に廃炉が決まった。

 プルトニウムが減らない状況に、国際社会からは懸念の声も出ている。中国は15年の国連総会で、「大量の核兵器を作るのに十分な量。核不拡散体制に大きなリスクだ」と批判した。

 岡委員長は31日、「日本だけがどんどんプルトニウムをためているという懸念を抱かれると、非常にまずい」と語り、菅官房長官も同日、「国際社会に引き続き丁寧に説明したい」と述べた。

 

六ヶ所の再処理制限 原子力委 プル削減へ新指針

福井新聞 2018年8月1日朝刊 5面

 青森県六ケ所村の使用済み核燃料再処理工場

 青森県六ケ所村の使用済み核燃料再処理工場

 

 国の原子力委員会(岡芳明委員長)は31日の定例会合で、日本が保有するプルトニウムの削減に向け、2021年度完成予定の青森県六ケ所村の再処理工場で製造するプルトニウムを通常の原発で使用する量に限定することを柱とした新たな指針を決定した。保有量が現行水準を超えないよう管理し、再稼働が遅れている電力会社のプルトニウムを他社に融通することを念頭に各社に連携を促して保有量を減らす。

 03年策定の「わが国のプルトニウム利用の基本的な考え方」を改定した。ただ、指針は具体的な保有量の上限や削減目標は示していない。削減の具体策にも踏み込まず、電力会社や経済産業省に委ねた形だ。東京電力福島第1原発事故後、通常の原発でプルトニウム・ウラン混合酸化物(MOX)燃料を燃やすプルサーマルも停滞し、削減できるかは不透明だ。

 会合では、日本のプルトニウム保有量が17年末時点で前年から約0・4トン増え約47・3トンとなり、うち海外保有分が約36・7トンと報告された。

 指針は、プルサーマルの実施状況に応じ、必要な量だけプルトニウムを製造するよう国が認可すると強調。海外に多くのプルトニウムを抱える電力会社が他社に譲渡して稼働原発で消費するなど各電力の連携を促し削減に取り組むほか、研究開発用は、当面の使用方針が明確でない場合は処分を検討するとした。

 日本に再処理を認めた日米原子力協定が30年の期限を満了し7月17日に自動延長され、米国側の通告で一方的に終了できるようになった。米国側は核兵器6千発分に相当する日本のプルトニウムに懸念を示し、対外的な説明を求めていた。

 日本は原発の使用済み核燃料からプルトニウムを取り出し、再び原発で使う核燃料サイクルを進めようとしているが、中核だった高速増殖原型炉もんじゅは16年12月に廃炉が決定。六ケ所村の再処理工場が稼働すれば、保有プルトニウムが増加する恐れがある。

 

再処理制限し増加抑制 プルトニウム削減へ新指針

佐賀新聞 2018年8月1日 2面
 青森県六ケ所村の使用済み核燃料再処理工場

 青森県六ケ所村の使用済み核燃料再処理工場

  国の原子力委員会(岡芳明委員長)は31日の定例会合で、日本が保有するプルトニウムの削減に向け、2021年度完成予定の青森県六ケ所村の再処理工場で製造するプルトニウムを通常の原発で使用する量に限定することを柱とした新たな指針を決定した。保有量が現行水準を超えないよう管理し、再稼働が遅れている電力会社のプルトニウムを他社に融通することを念頭に各社に連携を促して保有量を減らす。

 03年策定の「わが国のプルトニウム利用の基本的な考え方」を改定した。ただ、指針は具体的な保有量の上限や削減目標は示していない。削減の具体策にも踏み込まず、電力会社や経済産業省に委ねた形だ。東京電力福島第1原発事故後、通常の原発でプルトニウム・ウラン混合酸化物(MOX)燃料を燃やすプルサーマルも停滞し、削減できるかは不透明だ。

 会合では、日本のプルトニウム保有量が17年末時点で前年から約0・4トン増え約47・3トンとなり、うち海外保有分が約36・7トンと報告された。

 指針は、プルサーマルの実施状況に応じ、必要な量だけプルトニウムを製造するよう国が認可すると強調。海外に多くのプルトニウムを抱える電力会社が他社に譲渡して稼働原発で消費するなど各電力の連携を促し削減に取り組むほか、研究開発用は、当面の使用方針が明確でない場合は処分を検討するとした。

 日本に再処理を認めた日米原子力協定が30年の期限を満了し7月17日に自動延長され、米国側の通告で一方的に終了できるようになった。米国側は核兵器6千発分に相当する日本のプルトニウムに懸念を示し、対外的な説明を求めていた。

 日本は原発の使用済み核燃料からプルトニウムを取り出し、再び原発で使う核燃料サイクルを進めようとしているが、中核だった高速増殖原型炉もんじゅは16年12月に廃炉が決定。六ケ所村の再処理工場が稼働すれば、保有プルトニウムが増加する恐れがある。

 

核燃料再処理制限し増加を抑制 プルトニウム削減の新指針

共同通信 2018/7/31 15:49

青森県六ケ所村の使用済み核燃料再処理工場

 国の原子力委員会(岡芳明委員長)は31日の定例会合で、日本が保有するプルトニウムの削減に向け、2021年度完成予定の青森県六ケ所村の再処理工場で製造するプルトニウムを通常の原発で使用する量に限定することを柱とした新たな指針を決定した。保有量が現行水準を超えないよう管理し、再稼働が遅れている電力会社のプルトニウムを他社に融通することを念頭に各社に連携を促して保有量を減らす。

 03年策定の「わが国のプルトニウム利用の基本的な考え方」を改定した。ただ、指針は具体的な保有量の上限や削減目標は示していない。電力会社や経済産業省に委ねた形だ。