郡山に人が住んでいいのか?【再掲】川根眞也 放射線測定メール 2011年7月26日より 全文掲載

川根@中学 理科教員です。  

 「放射線測定メール」を直接受け取られている方は最後に書かれた、菊地透氏問題以 外は内容が同じです。重複してすみません。  

 2011年9月13日(火)に福島県郡山市に講演に行くことが決まりました。僕の話で一家庭でも避難する方がいるように、準備していきたいと思います。福島県郡山市で取れた稲わらを食べた牛が高い濃度の放射性セシウムで汚染されました。郡山市の小中高校生は、地産地消を基本とする学校給食を食べ、福島のベコたちと同じように内部被ばくをしつつあるのではないでしょうか。  

 フランスの民間団体 アクロ(ACRO)が、福島市の子どもたちの尿を調べたとこ ろ、全員の尿からセシウムが検出されました(2011年5月20日採取)。6歳から 16歳までの男女全員からセシウム134が0.41~1.13ベクレル毎リットル(Bq/L)、セ シウム137が0.43~1.30ベクレル毎リットル(Bq/L) 福島市の子供の尿 (2011年5月19日~21日)

http://www.acro.eu.org/OCJ_jp#10  

 テレビ、新聞では、「チェルノブイリ原発事故後の健康被害があったのは、ヨウ素131を吸ったために起きた小児甲状腺がんだけだった」「放射性セシウムによる健康被害 はない」と言い切る放射線の専門家たちが登場しています。本当にそうだと思いますか ?放射性セシウムで汚染された牛肉を食べて、健康被害が一切でないと思いますか?  チェルノブイリ原発事故で高濃度の放射性降下物(フォールアウトと言います)で汚 染されたのは、現在のベラルーシ共和国です。ここベラルーシ共和国などで、体内に蓄 積した放射性物質を測定するホール・ボディ・カウンターを設置し、子どもも大人も無料で測定している、イギリスの民間団体があります。そして、体内に蓄積した放射性物 質をできるだけ早く排出できるような食べ物の研究を11年間続けてきたのが、ベラッド 研究所(BELRAD研究所)です。そのベラッド研究所のV.B.ネステレンコ氏とA.V.ネステ レンコ氏が、「ニューヨークアカデミー年報2009」に寄稿した論文によれば、ベラルーシ共和国は子どもたちが体内に蓄積した放射性物質を「危険限界」を15-20ベクレル毎 キロ(Bq/kg)としているが、効果的な被ばく予防のためには、その30%にするべきだ と主張しています。つまり、体重10kの赤ちゃんであれば、ベラルーシ政府の決めた「 危険限界」は全身あたり150-200ベクレル(Bq)。両ネステレンコ氏が主張している「 限界値」は、全身あたり45-60ベクレル(Bq)となります。 ちなみに、日本政府は大人、子ども、乳幼児を十把ひとからげにして、セシウム134、137は500ベクレル毎キロ(Bq/kg)の食品まで安全、ヨウ素131にいたっては2000ベクレ ル毎キロ(Bq/kg)の食品まで安全としています。 ありえません。 (写真1) これで安全ですか?給食だいじょうぶですか? 今回の放射性セシウム汚染牛肉の最高値は4350ベクレル毎キロ(Bq/kg)。この牛肉を 10g食べただけで、43.5ベクレル毎キロ(Bq/kg)の放射性セシウムが体内に入るの です。ちなみに、政府はセシウム134、セシウム137だけを測っています。セシウムがあ るということはストロンチウムが同時にあることが考えられます。実は、セシウム134 、セシウム137よりもストロンチウム90の方が、発がんリスクは高いのです。ストロン チウム90は、カルシウムと非常に似た性質を持つため、骨や心臓に蓄積します。白血病 や心筋梗塞を発症する危険性を高める物質です。しかし、政府は稲わらをきちんと調べ 、ストロンチウム90があるか、ないか、明らかにするつもりはないようです。  手塩にかけてベコたちを育ててきた畜産家のみなさんには、申し訳ありませんが、放 射能汚染された牛肉、放射能汚染された牛乳は食べてはなりません。これは畜産家のみ なさんの人生を奪う決断になるかもしれません。しかし、子どもたちの未来を奪う権利 は誰にもないのです。  僕は、日本政府に対し、すべての牛肉、牛乳の流通を一時停止することを求めます。 そして、牛肉、原乳の全品検査をするべきです。さらに、その放射性物質の濃度をすべ て公開することを求めます。ドイツ放射線防護協会が乳幼児・子ども・若者の食品に対 して決めた基準は4ベクレル毎キロ(Bq/kg)です。日本政府は、500ベクレル毎キロ( Bq/kg)とか2000ベクレル毎キロ(Bq/kg)とかいうめちゃくちゃな暫定基準を即時撤回 し、ドイツと同じ4ベクレル毎キロ(Bq/kg)を新しい基準とすることを要求します。  もし、日本政府はこの措置を取らないのであれば、僕は、知り合いのすべての人に東 日本の野菜、肉、さかなの不買運動を呼びかけます。その範囲は少なくとも、「牧草汚 染 刈り取り保管を」の記事に載っている、赤い点々の地域です。それは、すでに、5 月29日付メール「内部被ばくを避ける方法(8) 俳優山本太郎氏と食品の問題」で書 いたように、埼玉県、茨城県、千葉県、東京都、栃木県、群馬県、福島県、岩手県産の 野菜、肉、牛乳、卵、さかなです(さかなは今回付けくわえました。このメールを読み たい方は川根眞也 shinyakawane.ceaf@nifty.comまで。) (写真2) 牧草汚染、早期に刈り取り保管を 農水省が指導方針 朝日新聞 夕刊  2011年5月19日 記事はこちら ↓ 早くコピーしておかないと、WEB上から消されるかも? http://www.asahi.com/special/10005/TKY201105190225.html  僕は、今年4月26日がチェルノブイリ原発事故25周年であることから、ベラルーシ やウクライナの方々に学びたいと思っていました。東京の集会で、パーベル・ヴドヴィ チェンコさんという方と出会いました。パーベルさんは、ロシアのブリャンスク州ノヴ ォズィプコフ市に在住で、若者の自立のための組織「ラージミチ」を結成された方です 。放射能による体内汚染から、若者たちを守るために、「市場の汚染された食べ物は食 べてはならない」と教え、年に1ヶ月くらい、子どもたちをきれいな空気、きれいな水 、きれいな食べ物のある地域に連れていくキャンプを主催しています。  パーベルさんは、チェルノブイリ原発事故当時、32歳の高校教師でした。現在は58歳 。そのパーベルさんはどのようにして生活しているか興味があり、集会終了後、直接彼 に聞きました。「あなたは何を食べているのか」と。彼は、強制避難区域にあたる場所 に住んでいたために、移住したかった、しかし、お金がなかった。ノヴォズィブコフ市 で暮らしていくしかなかった。彼は週一回、自動車で100km離れたスーパーに行き、 水と食糧を買って生活しているのだそうです。  僕が自分の行動の指針としているのは、実は、パーベルさんです。  避難すべきなのは、福島県郡山市だけではありません。今回、汚染稲わらが発見され た、福島県南相馬市、喜多方市、相馬市、浅川村、宮城県栗原市、登米市(とめし)、 大崎市、岩手県一関市、藤沢町、群馬県太田市のすべての住民です。牛が食べて被ばく するような環境に住むべきではありません。  政府はこれらの超高濃度放射能汚染地域に住む住民に対して、国としての最低限の責 任を果たすべきです。衣食住と就労の保障です。1954年以来一貫して、国が進めてきた 原子力政策の犠牲者です。東電に負担させるのは当然として、国家補償として、住民の 生活を保障すべきです。  実は、稲わらが高濃度に放射能汚染された地域は、群馬大学の早川由紀夫教授が作成 した放射能汚染マップの高濃度汚染地帯とぴたりと重なります。ということは、東京の 江東区や埼玉県に三郷市、千葉県の柏市、流山市、松戸市、群馬県川場村などにも稲わ らを作っていたら、同様な汚染をした可能性があります。ただちに土壌を調べ、福島県 南相馬市に近い値であるならば、即刻住民を避難させるべきです。 (写真3) 早川由紀夫教授作成 「放射能汚染マップ 福島第一原発からもれた放射 能の広がり」  先に紹介した、ベラッド研究所(BELRAD研究所)の両ネステレンコ氏は論文で、セシ ウム137の94%は食べ物から体内に入ると報告しています。そして、セシウム137は子ど もの体内に50ベクレル毎キロ(Bq/kg)以上蓄積すると、子どもの生命に係わる、重要 な臓器が病気になる。例えばそれは心血管系、神経系、内分泌系、免疫系などであり、 腎臓、肝臓、眼なども同様である(Bandazhevskaya et al.,2004)。と書いています。 50ベクレル毎キロ(Bq/kg)とは、体重10kgの子どもにとってみれば、50×10=500  ベクレル(Bq)です。  1日10ベクレル蓄積していれば、50日に達する値です。7月25日発売の週刊現代によ れば、記者が福島市内のスーパーで買った、青森県産の牛肉、「国産」の豚肉、たまご を、「市民放射能測定所」で測ってもらったところ、牛肉18ベクレル、豚肉24ベクレル 、卵11ベクレルだったという。学校給食も同じであった。メニューは、ハンバーグ、付 け合せの野菜、スープとご飯、牛乳。それを混ぜて測定したところ、約40ベクレルだ ったという。このうち、何ベクレルが子どもの体内に蓄積したかは、ホール・ボディー ・カウンターで測定しなければ分からないのです。 事態は一刻の猶予もなりません。みなさんの行動をお願いします。  ちなみに、7月13日は市民会館うらわで、7月19日は市民会館おおみやで、さいたま市 の危機管理部安全安心課が主催した緊急セミナー「福島原発事故に伴う放射能・放射線 の健康影響を知る」が開かれました。  埼玉大学理工学部の坂井貴文教授は、「どんな放射線でも安全ということはない」と 福島第一原発から出ている放射性物質についてわかりやすく説明してくれました。  しかし、自治医科大学ラジオ・アイソトープ・センター管理主任の菊地透教授は、1 00ミリシーベルト(mSv)まではまったく健康被害はない、と繰り返し説明し、広島 ・長崎の原爆被爆でも新生児・9月児での、「奇形児」発生率に変化はなかったという 驚くべき講演をしました。  さらに、菊地透氏は、7月19日の講演で、川根の「外部被ばくと内部被ばくについ ての、健康被害の影響はどうか?」という質問に対し、菊地氏「外部被ばくと内部被ば くの実効線量は同じ。1対1。」という答えをしました。さらに、それに続けて、チェ ルノブイリ原発事故後には、ヨウ素131による小児甲状腺がんは増えたが、放射性セ シウムの汚染による健康被害は観察されていない、と発言をして質疑を終えました。ベ ラルーシなど、子どもたちの98%が何らかの健康被害を負っている現状をまったく無 視する発言です。  長崎大学の山下俊一、広島大学の神谷研二と同じように「これくらいの放射線安全で す」学派たちは、このような事実を無視した講演活動をあちこちで行っています。福島 県が県民放射線健康リスクアドバイザーに就任して、小学校や公民館で講演をしまくっ た、山下俊一がその典型的な例です。このために、福島県民は避難を思いとどまるなど 、判断の混乱を招きました。  広瀬隆氏は、こうした、市民にうそを吹聴した、山下俊一らを刑事告発しました。 広瀬隆氏、明石昇二郎氏 東京電力社長、山下俊一らを刑事告発 Ustream動画 http://www.ustream.tv/recorded/16005458    菊地透氏は、医療分野の放射線専門家でつくる「医療放射線防護連絡協議会」総務理 事を務めています。彼は、3月11日直後に次々と原発が爆発した際に、住民にヨウ素 剤を配るか、否か、政府に進言をする責任のある立場にありました。ヨウ素剤は、三春 町では配られましたが、双葉町、大熊町、双葉町、飯舘村を含め、まったくと言ってい いほど配られませんでした。私は通常の放射線量の40倍を観測した、あの3月15日 には、さいたま市でも配布すべきであったと考えています。さいたま市で小児甲状腺が んの子どもが発症した場合、彼を刑事告発すべきであると考えます。  小児甲状腺がんの発生割り合いは10万人に約0.2人であるといわれています。さ いたま市の15歳未満の人口は172,165人。さいたま市での通常の発生確率は0 .344人であり、1人の患者が出た時点で、放射線の影響の可能性あり。2人の患者 が出た時点で放射線の影響が確定すると考えます。  今後、さいたま市での菊地透氏の活動に注視しなくてはいけないと思います。 「チェルノブイリ地区の放射性物質からの解放」BELRAD研究所 V.B.ネステレンコ A. V.ネステレンコ ニューヨークアカデミー年報2009寄稿論文 http://www.olivenews.net/img/chernobly20110706.pdf  あす、春日部市で講演をすることになりました。お近くの方がいらっしゃいまし たら、ご連絡下さい。                                 川根眞也 *************************************** 講演会 「福島第一原発事故と放射能 内部被ばくを避けるために」 中学校の理科の先生がこの4ヶ月間原子力発電所の事故と放射能について調べ考えてき たこと ・放射能の単位のお話・外部被ばくと内部被ばく 年間1ミリシーベルトで安全か ・学校給食、水道水、プールの安全性 ・福島原発から放射能はもうでていないのか? ・関東地方に生活しつづけるための10カ条 【講師】  川根眞也 中学教員(放射能を考える会・内部被ばくを考える市民研究会 準備会) 【ゲスト】 元原発労働者の方 【日時】 7月27日(水)13時~15時 (開場12:30) 【場所】 武里地区公民館(武里市民センター内)       春日部市備後西1-13-2(最寄駅一ノ割駅)      線路沿の道を武里方面に歩いていただき、      春日部内科クリニックの踏み切りを渡ってください。 【参加費】資料代として 500円 (お茶付)(子ども・学生無料)  【問い合わせ】連絡先  山本 080-3507-0176                tomo-cchi1953@tcat.ne.jp              会 sukoyaka_kasukabe_2011@yahoo.co.jp 【主催】 放射能から子どもの未来を守ろう~5年後10年後子どもたちが健やかに育つ 会・春日部~ *準備の都合上、メールやコメント欄にて「参加します」と教えてくださると助かりま す。もちろん、当日参加OK. *同じ部屋に赤ちゃんコーナーも用意します。遊ばせながら聞きましょう。絵本やおも ちゃをちょっと用意してきていただけますか? *チラシを作って配っていただいたり、ツイッターなどで拡散していただいたりよろし くお願いします。 *準備から入れる方は、12時集合でお願いします。 「放射能から子どもの未来を守ろう~5年後10年後子どもたちが健やかに育つ 会・春日部~」のホームページです。 ↓ http://blog.goo.ne.jp/kodomo2011