福島の子どもの甲状腺がんは2014年12月31日段階で117人となりました。2015年2月12日第18回福島県県民健康調査検討委員会の発表に基づくものです。

 「県民健康調査検討委員会の発表に基づく」 と書いたのは、福島県立医大は小児甲状腺がんの患者を「悪性うたがい」と「悪性確定」とにわけているのを、川根はすべて甲状腺がんの患者として合計しているからです。

 「悪性うたがい」は実は、がんかどうか不明という意味ではなく、まだ甲状腺摘出手術をしていない患者、つまり手術待ちの患者を意味する、と福島県立医大の鈴木眞一氏は説明しています。なぜ、「悪性うたがい」というまぎらわしい表現をするのかというと、穿刺細胞診で「悪性」と診断されても中には甲状腺がんではない患者が1割以下(1%でも1割未満です。0.01%でも。)いるから、と説明しています。

  2014年12月25日の第17回県民健康調査検討委員会の発表(2014年10月31日段階)では、先行検査(2011年~2013年)では、福島の子どもたちの小児甲状腺がん確定が85人、手術待ち23人でした。本格検査(2014年4月2日~2015年度末を予定)では、小児甲状腺がん確定が0人、手術待ち4人でした。この先行検査では手術の結果、良性結節であった子どもが1人いたので、その子どもの数は除いています。

 2015年2月12日の第18回県民健康調査検討委員会の発表(2014年12月31日段階)では、先行検査(2011年~2013年)では、福島の子どもたちの小児甲状腺がん確定が87人、手術待ち22人でした。本格検査(2014年4月2日~2015年度末を予定)では、小児甲状腺がん確定が1人、手術待ち7人でした。先行検査では手術の結果、良性結節であった子どもが1人いたので、その子どもの数は除いています。

 つまり、2014年10月31日段階では、小児甲状腺がんの子どもが112人だったのが、2014年12月31日現在では、小児甲状腺がんの子どもが117人となった、ということです。

 実は、このことを正しく伝えているのは朝日新聞だけです。見出しに「福島)甲状腺がん118人に『原発事故影響考えにくい』」とあります。(2015年2月13日)しかし、この朝日新聞ですら、福島版でのみ掲載したもようであり、朝日新聞の全国版には2015年2月12日から2月14日までの朝夕刊を確認しましたが記事がありませんでした。全国に伝えるべき価値のない記事とデスクが判断したのでしょうか?

 朝日新聞デジタルからの記事です。 

 そして、一番犯罪的なのは読売新聞の記事です。見出しは「福島県の甲状腺検査 新たに1人がん確定 2巡目」であり、あたかもこの1年で1人しかの甲状腺がんの子どもが出ていないかの印象をうけます。実際にはたった2か月で112人から117人と5人も甲状腺がんの子どもが見つかっているのです。総数117人についても理解しずらい文章です。

  東京新聞は記事を図入りで解説しています。2014年4月2日からの本格検査で甲状腺がん確定1人、疑い7人出たことを解説していますが、総数117人を強調していない記事となっています。

 毎日新聞もほぼ同じ内容のベタ記事です。

 これは、先行検査で見つかった109人の子どもの存在を忘れさせる効果があるのではないか、と疑問に思いました。

  先行検査(2011年度浜通り、2012年度中通り、2013年度会津、いわき)の子どもたち109人の甲状腺がんは、原発事故による放射能の影響ではない、と放射線の専門家たちが大合唱です。

 しかし、山下俊一氏は2000年「被爆体験をふまえた我が国の役割-唯一の原子爆弾被災医科大学から国際被ばく者医療協力-」題した論文の中で、「ベラルーシ共和国ゴメリ州における年次別 事故当時年齢別 推移」の小児甲状腺がん登録数を発表しています。

 これを見ると、ベラルーシゴメリ州では、チェルノブイリ原発事故が起きた1986年に小児甲状腺がんを発症し登録されたのは事故当時13歳の子ども1人。事故2年目に登録された子どもは事故当時11歳、12歳、14歳、16歳の子どもの4人に増えてます。以降、事故3年目→4年目→5年目→6年目→7年目→8年目→9年目→10年目の小児甲状腺がの子どもたちの数は

3→5→15(5年目)→47→35→45→56→63

と爆発的に増えていきます。ちなみに1986年のチェルノブイリ原発事故以前のベラルーシ全土の小児甲状腺がんの数は0~2人でした。ベラルーシには6つの州と首都ミンスク市の7つの行政区があります。ゴメリ州はそのたった1つに過ぎません。このゴメリ州だけで実に年間63人もの小児甲状腺がんを出すことになったのです。

 事故後5年目の1991年とは、山下俊一らが、超音波エコーの検査機器を持ち込んで、ウクライナ、ベラルーシ、ロシア連邦の3共和国で、事故当時の児童を対象に検診活動を開始した時期とぴったり一致しています。

 小児甲状腺がんは原発事故5年目から急増した、というのはうそで、超音波エコーによって原発事故5年目からはっきりとわかったのにすぎないのではないか、と思います。そして、たった2011年から2013年までの3年で109人もの小児甲状腺がんの子どもを出した、日本政府の対策は異常です。

 高放射能汚染地帯に子どもたちを住まわせてきたからだ、と思います。

 福島県だけではないのではないでしょうか?初期の放射能プルームを吸い、現在もホット・スポットに住み続けている子どもたちに、健康被害が出ています。

 除染は幻想です。移染にしかすぎません。山に降り積もった放射能が雨風に舞っくるのです。住民の強制的移住しか、健康を守る手立てはありません。

 医師、学者、自治体関係者の真剣な取り組みをもとめます。新聞記者のみなさん、真実の報道をお願いします。

 

 

 

 こちらもどうぞ。

資料『ベラルーシ共和国ゴメリにおける小児甲状腺がん登録 年次別 事故当時年代別 山下俊一氏 2000年』

資料『チェルノブイリ原発事故被災児の検診成績 I および Ⅱ および Ⅲ “チェルノブイリ笹川医療協力プロジェクト1991-1996”より 山下俊一*/柴田義貞*/星正治*/藤村欣吾*/ほか**』