[編集者:注] 2013年9月5日にこの原稿を書いた時の題名は、「『放射線管理区域』にあたる土壌の上の空間線量は0.13マイクロシーベルト/時」でした。これを「『放射線管理区域』にあたる土壌の上の空間線量は0.14マイクロシーベルト/時【改題】」に改題します。チェルノブイリ原発の最大の被災地のベラルーシ、ウクライナ、ロシアでの「放射線管理区域」は3.7万ベクレル/m2以上。日本での放射線管理区域の規定は4万ベクレル/m2です。2013年9月5日当初は、ベラルーシ、ウクライナ、ロシアの3.7万ベクレル/m2 セシウム137がある場合に、その地上1mでの空間線量率は0.13マイクロシーベルト/時、と書きました。

 現在の日本では、放射線管理区域の規定があってもまるでないかのような、除染や放射能汚染された地域での教育活動や人々の生活が行われています。本来、放射線管理区域は必要があって入る人(X線の放射線技師や原発労働者)が働く場所であり、そこで人間が住むことは想定されていませんでした。当然、18歳未満は立ち入り禁止ですし、飲食禁止、その「管理区域」から出る場合はハンドモニタやホールボディーカウンターなど、体の表面が汚染されていないか、内部被ばくしていないか、スクリーニング検査を受けないと、作業現場を出ることができない場所です。この放射線管理区域の規定は4つありますが、その1つである「3ヶ月で1.3ミリシーベルト(年間5.2ミリシーベルト)」の規定から単純に、1.3ミリシーベルト(=1300マイクロシーベルト)を3ヶ月の時間(3月×30日×24時間=2160時間)で割り、0.60マイクロシーベルト/時が「管理区域」であるとする、議論が横行しています。残念ながら、東電 福島第一原発事故からの避難者を支援する立場や、原発の再稼動に反対する立場の人からも、この空間線量0.60マイクロシーベルト/時が、放射線管理区域相当だ、という議論があります。

 3ヶ月で1.3ミリシーベルトの被ばく管理は、その場所にずっと居続けることを想定したものではなく、瞬間的な被ばくを前提とした被ばく管理です。場所の管理としての放射線管理区域は以下にも紹介しているように、ガンマ線核種、ベータ線核種では4万ベクレル/m2以上。アルファ線核種では4000ベクレル/m2以上です。このガンマ線核種、ベータ線核種としてセシウム137が4万ベクレル/m2以上ある場合の、地上1mでの空間線量率は下記の河田東海夫氏の資料の kBq/m2 = 282×μSv/h から計算し、0.141マイクロシーベルト/時です。

 以上の理由から、この資料では「ベラルーシ、ウクライナ、ロシアでの3.7万ベクレル/m2は空間線量率は0.13マイクロシーベルト/時」ではなく、「日本での放射線管理区域 4万ベクレル/m2は空間線量率では0.14マイクロシーベルト/時になる」という資料に変更します。

[初稿] 2013年9月5日 川根 眞也

[第1次改訂] 2018年2月4日 川根 眞也

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 放射性物質が3.7万ベクレル/m2あるときの高さ1mでの空間放射線量率(マイクロシーベルト/時)はどれくらいなのでしょうか?

 この3.7万ベクレル/m2とは、かつて使用されていた単位1キュリー/km2に相当します。チェルノブイリの被害にあった、ベラルーシやウクライナ、ロシアでは土地がセシウム137によって3.7万ベクレル/m2(1キュリー/km2)以上、汚染されていると、「放射線定期管理居住区域」または「優先的な社会的・経済的地位を有する居住地域」として、放射性物質が蓄積しやすい農作物の生産制限や、新たな住民被ばくを避けるために工場の新設禁止などの措置が取られています。

チェルノブイリ原発事故に伴う放射性物質汚染区域の地域区分 ベラルーシおよびロシア

 

 日本における「放射線管理区域」とは表面汚染が4万ベクレル/m2以上の区域を言います。ですから、この放射性物質が3.7万ベクレル/m2とほぼ同じです。ですから、以下の放射性物質が大地に3.7万ベクレル/m2(1キュリー/km2)あるために、空間線量が最後に表示した表の右欄のような数値ある場合、日本の「放射線管理区域」に相当する可能性があると考えなくてはなりません。

 放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律
(昭和三十二年六月十日法律第百六十七号)

 放射線を放出する同位元素の数量等を定める件(平成十二年科学技術庁告示第五号)
 最終改正 平成二十四年三月二十八日 文部科学省告示第五十九号

 上記の2番目に「放射線管理区域」の規定があります。「放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律による管理区域」(平成十二年科学技術庁告示第五号、最終改正 平成二十一年十月九日 文部科学省告示第百六十九号 第四条)の定める「放射線管理区域」とは4つの規定があります。
1.外部被ばく線量が3カ月で1.3ミリシーベルト
2.空気中の放射性物質の濃度 セシウム137の場合 3000ベクレル/m3
3.その場所の表面汚染度 セシウム137の場合 40000ベクレル/m2
4.外部被ばくと空気中の放射性物質の吸入による内部被ばくがある場合 それぞれの基準値の和が1 
<4の一例> 外部被ばく3カ月で0.65ミリシーベルト、空気中のセシウム137 1500ベクレル/m3

 です。

 つまり、日本ではセシウム137で4万ベクレル/m2汚染された地域は放射線管理区域なのです。これはウクライナ、ベラルーシ、ロシアの「放射線管理区域」の3.7万ベクレル/m2に相当します。

 以下の高さ1mでの空間線量率(自然放射線が0.04マイクロシーベルト/時とすればこれを足した値)である場合、その地域は「放射線管理区域」に相当する可能性があると考えなくてなりません。正確には土壌中を汚染している放射性物質を特定し、汚染の表面密度(ベクレル/m2)を測定する必要があります。

 自然放射線が0.04マイクロシーベルト/時である場所で、セシウム137で3.7万ベクレル/m2汚染された場所では、地上1mの空間線量は0.13マイクロシーベルト/時になる、ということです。3.7万ベクレル/m2は1キュリー/km2にあたり、これはウクライナ、ベラルーシ、ロシアでの「放射線管理区域」に相当します。農作物は放射線物質の検査なしに食べてはいけない、と定められています。

放射性物質による汚染の表面密度が3.7万ベクレル/m2の場合の1mの高さでの空間線量率   

【単位】マイクロシーベルト/時

放射性核種

空間線量率(マイクロシーベルト/時

Mn54(マンガン54)

0.135

Co60(コバルト60)

0.379

Zr95(ジルコニウム95)

0.118

Zr95―Nb95(ジルコニウム95―ニオブ95)

0.385

Ru103(ルテニウム103)

0.081

Ru106―Rh106(ルテニウム106―ロジウム106)

0.032

Sb125(アンチモン125)

0.073

I131(ヨウ素131)

0.063

Cs137(セシウム137)

0.093

Ba140(バリウム140)

0.032

Ba140―La140(バリウム140―ランタン140)

0.431

Ce141(セリウム141)

0.011

Ce144(セリウム144)

0.003

Ce144―Pr144(セリウム144―プラセオジム144)

0.007

【編者 注】原典では単位は照射線量率 マイクロレントゲン/時(μR/h)でした。これを空間線量率 マイクロシーベルト/時(μSv/h)に変換しました。レントゲン(照射線量)からシーベルト(実効線量)への変換は、1μR/h =0.00877μSv/hとして計算しました。日本では4万ベクレル/m(アルファ線を出さない核種による汚染)が「放射線管理区域」にあたります。この放射性物質による汚染の表面密度が3.7万ベクレル/m2はほぼ日本の「放射線管理区域」に相当します。

【出典】チェルノブイリ救援調査団編『汚染地帯からの報告』 リベルタ出版 

1991年4月26日  p.12~13

【編集】川根 眞也

 また、2011年5月24日行われた第16回原子力委員会で、日本原子力発電環境整備機構(NUMO)の河田東海夫氏が、セシウム137による土地汚染(ベクレル/m2)と空間線量率との関係をグラフ化しています。チェルノブイリでの放射線管理区域37kBq/m2(3.7万ベクレル/m2)での地上1mでの空間線量は0.13マイクロシーベルト/時である、とこの資料で述べています。

 場所の管理としての放射線管理区域は、ガンマ線核種、ベータ線核種では4万ベクレル/m2以上。アルファ線核種では4000ベクレル/m2以上です。このガンマ線核種、ベータ線核種としてセシウム137が4万ベクレル/m2以上ある場合の、地上1mでの空間線量率は上記の河田東海夫氏の資料の kBq/m2 = 282×μSv/h から計算し、0.141マイクロシーベルト/時です。

 少なくとも、空間線量率で0.14マイクロシーベルト/時ある場所に生活したり、学校などの教育活動をするべきではありません。学校ならば廃校にすべきです。